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診療科大腸肛門外科

更新日:

すべての大腸がん患者さんに適切な治療を

大腸がんの増加は、世界的な健康問題となっています。この増加の背景には、食生活の変化や運動不足、肥満、喫煙、遺伝的要因など、さまざまな要因が関与しています。また、高齢化社会に伴い、ご高齢や様々な併存疾患を持つ大腸がん患者の増加を認めます。当科では、その様な患者さんに対しても他科、他職種と連携し個々の患者さんに合った治療を進めていきます。

大腸肛門外科副部長
内藤 敦

対応疾患

大腸肛門外科では、4人の専門スタッフが主に大腸がん(結腸がん・直腸がん)を中心に診療を行っています。スタッフの内3人が日本内視鏡外科学会技術認定医(大腸)および全員がロボット支援手術認定医(da Vinciサージカルシステム)を取得し、このうち2名はロボット支援手術プロクター(手術指導医)であり、安全な体制を整えています。また他科と連携して、術前診断から内視鏡治療、手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線化学療法など、病状を総合的に判断して患者さんに適した治療を提供しています。

結腸がん 外科手術(ロボット支援下手術・腹腔鏡下手術)
直腸がん 外科手術(ロボット支援下手術・腹腔鏡下手術・経肛門的鏡視下手術)
大腸がん以外の悪性疾患 外科手術(ロボット支援下手術・腹腔鏡下手術・経肛門的鏡視下手術)

主な手術・検査・設備等

結腸がんの手術

2012年頃から開腹手術に比べてより低侵襲な手術である腹腔鏡手術を可能な限り行っています。創が小さく、傷の痛みも軽度で、術後の回復が開腹手術よりも早く、早期の社会復帰が可能となります。
さらに当科では結腸がんに対しても、2022年よりロボット支援手術を第1選択としています。がんにより通過障害を認める腸閉塞を伴った進行大腸がんに対しては消化器内科と連携して大腸ステントや経肛門チューブ留置を行い、その後に腹腔鏡手術やロボット支援手術を行っています。

早期直腸がんの経肛門的内視鏡下手術(TAMIS)

大腸内視鏡での切除が困難な肛門に近い比較的早期の直腸がんに対しては、肛門に専用機器を装着して直腸内を炭酸ガスで膨らませ、鏡視下で腫瘍を切除する方法(経肛門的内視鏡下手術:TAMIS)を行っています。
肛門からの直腸内操作のため、腹部に傷がつかず、これまで永久人工肛門を造設せざるを得なかった早期直腸がんの患者さんでも肛門温存が可能となります。

直腸がんの手術

直腸がんに対しても従来の腹腔鏡下手術に加え、2018年からロボット支援直腸切除術を行なっており、現在はロボット支援手術を第一選択としています。これにより通常の腹腔鏡下手術では困難な症例(高度肥満・巨大病変など)に対しても、より根治性の高い手術が可能となりました。
また病変に応じて術前放射線化学療法や術前化学療法を行い、根治性に加えて、肛門温存や排便、排尿・性機能温存などに配慮した質の高い治療を提供しています。

ロボット支援手術

「ダビンチ(da Vinci)」という器械を使用して行われ、当院にも導入しています。「ダビンチ」を用いた直腸がん手術が2018年4月に、さらに結腸がん手術が2022年4月より健康保険の適応対象となり、現在当院ではすべての大腸がん症例に対してロボット支援手術を第一選択としています。医療費は通常の腹腔鏡下手術と同じです。
従来の腹腔鏡手術では骨盤内等の深い部位の操作に制限がありました。「ダビンチ」は鮮明な術野、手ブレ防止機能や手首以上の可動域を持つ鉗子によって、深くて狭い骨盤内での操作がより繊細に行うことができます。このため、高い根治性と傷が小さい、出血が少ない、術後合併症のリスクが低いなど様々なメリットが期待できます。
当院では2022年より「da Vinci Xi」2台体制で手術を行っています。

経肛門的直腸間膜切除術(TaTME)併用のロボット支援手術

直腸がんや神経内分泌腫瘍など非常に肛門に近い病変の場合、ロボット支援手術でも切除が困難で永久人工肛門を造設せざるを得ない症例があります。
当科ではこのような困難な症例に対して、経肛門的直腸間膜切除術(TaTME)を併用したロボット支援手術も行っています。TAMISと同様の専用機器を装着して、経肛門的鏡視下手術を行うと同時に腹腔側からロボット支援手術を行うことで、根治性に加えて、肛門温存に配慮した質の高い治療を提供しています。

腹腔鏡下手術

お腹に小さな傷を数か所つけて、細長い手術器械を挿入して行う傷の少ない手術です。

肛門温存

肛門近くに発生した進行直腸癌に対して、ロボット手術・術前化学療法・術前化学放射線療法などを併用し、可能な限り永久人工肛門を回避する方針で治療を行っています。

化学療法

近年、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤をはじめとするがん薬物療法の進歩やがんゲノム医療の発展により、がん治療全体において薬物療法が担う役割は増えてきています。

特色・強み

腹腔鏡下手術に加え、手術支援ロボット「ダビンチ(Xi)」を用いたロボット支援下手術を数多く行っています。
当院は「ダビンチ(Xi)」が2台あるため、ほとんどの大腸がん症例でロボット支援下手術を行うことが可能です。
また、肛門に非常に近い早期下部直腸がんに対し、病変に応じて経肛門的鏡視下手術(お腹をきらない)を行っています。

高齢がん患者への取り組み

当院では高齢化社会に対応すべく周術期に様々な取り組みをしています。そのひとつとして高齢者総合的機能評価(CGA: Comprehensive geriatric assessment)があります。専門医師が患者さんの身体の状態を把握するだけでなく、精神的・心理的な状態や社会的・経済的な側面まで総合的に評価して、手術前から様々な介入を行います。この取り組みは単に手術を受けることだけを目標とするのではなく、手術後の生活を見据えたものであり、術後により快適な人生を送っていただくための取り組みになります。

大腸がん手術件数 

2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
結腸がん 開腹 36 28 18 13 14
腹腔鏡 87 94 77 58 27
ロボット - - - 20 55
直腸がん 開腹 7 7 7 9 1
腹腔鏡 21 19 17 16 5
ロボット 29 33 34 24 44
大腸がん 開腹 43 35 25 22 15
腹腔鏡 108 113 94 74 32
ロボット 29 33 34 44 99

治療実績・成績

● 大腸がんの 治療成績

● 鼠径ヘルニア

年間100-120例の鼠径ヘルニア手術を行っています。高齢者に多い疾患でありますが、全身麻酔下手術に耐えうる患者さんには、腹腔鏡下修復術(TAPP)を提案させていただきます。また、腰椎麻酔下でのクーゲル法やメッシュプラグ法などの従来の術式に加え、重篤な合併症があり手術を受けることが困難な患者さんに対しても、局所麻酔下での修復術(Lichtenstein法)を行っています。どのような患者さんにも可能な限り治療を検討します。

● 腹壁瘢痕ヘルニア

腹部手術の合併症の一つである腹壁瘢痕ヘルニアは、日常生活に支障をきたし、整容性の点からも手術をお勧めしております。近年、腹腔鏡下修復術(IPOM)の有用性が報告され、当科においても積極的に行っています。年間20例前後の手術を行っており、半数以上の症例で腹腔鏡下修復術を実施しています。

原著、総説、著書

題名 著者 著書・誌名
2021 消化器領域の遺伝性腫瘍(家族性大腸腺腫症、リンチ症候群)の基礎知識 冨田尚裕、能浦真吾 消化器看護
2021 リンパ節転移を伴った9mmの直腸神経内分泌腫瘍G1の1例 藤川馨、能浦真吾 日本外科系連合学会誌
2021 単孔式腹腔鏡下結腸部分切除・体腔内吻合術で切除し得た下行結腸癌術後吻合部再発の1例 鈴木陽三、能浦真吾 癌と化学療法
2021 大腸癌卵巣転移切除術の予後についての検討 吉原輝一、能浦真吾 日本消化器外科学会雑誌
2021 The Validity of a New Edition of Classification for Ovarian Metastasis from Colorectal Cancer Yoshihara T, Noura S J Anus Rectum Colon
2021 Tolerability and safety of adjuvant chemoradiotherapy with S-1 after limited surgery for T1 or T2 lower rectal cancer Tei M, Noura S Int J Clin Oncol
2021 Impact of aspirin discontinuation on thrombotic complications in laparoscopic colorectal cancer surgery Harino T, Noura S Surg Endosc
2021 Simple surgical method for clamping the rectum in robot-assisted laparoscopic rectal surgery for rectal cancer, a simple clamping technique: A video vignette Takeyama H, Noura S Colorectal Dis
2021 Risk Factors for Lymph Node Metastasis in Pathological T1b Colorectal Cancer Naito A, Iwamoto K, Ohtsuka M, Imasato M, Nakahara Y, Mikamori M, Furukawa K, Moon J, Asaoka T, Kishi K, Akamatsu H in vivo
2021 大腸T1bがんの予後に対する内視鏡切除の影響 内藤敦、岩本和哉、大塚正久、今里光伸、日向聖、中原裕次郎、三賀森学、古川健太、文正浩、浅岡忠史、岸健太郎、水島恒和、赤松大樹 癌と化学療法

地域の医療関係者の方へ

大腸がんなど下部消化管の悪性腫瘍に対して、結腸・直腸を問わずロボット支援下手術を第一選択としています。当院は「ダビンチ(Xi)」が2台あるため、待機期間が短くロボット支援下手術を行うことが可能です。

地域の患者さんへ

大腸がんに対して、結腸・直腸を問わずロボット支援下手術を第一選択としています。当院は「ダビンチ(Xi)」が2台あるため、待ち時間が短くロボット支援下手術を行うことが可能です。

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