診療科整形外科
更新日:地域の開業医の先生方と協力しての病診連携
現在の医療の流れは役割分担~病診連携です。地域の開業医の先生方では手に余る重症例、診断困難例、手術が必要な症例を中心に急性期医療を担当します。一方生活に密着した指導や予防、投薬、リハビリは地元の開業医の先生方の得意とされるところですので急性期治療が落ち着けばおねがいします。堺市は面積が広く一施設のみですべての治療を完遂することは困難ですので各地域の先生方と連携を図ります。
整形外科部長
石井 正悦
対応疾患
脊椎疾患 | |
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腰部脊柱管狭窄症 腰椎すべり症 | 画像診断 内服から開始する保存治療 腰椎除圧術 腰椎固定術 |
腰椎椎間板ヘルニア | 画像診断 内服から開始する保存治療 ヘルニコア 椎間板摘出術 |
頚髄症 | 画像診断 椎弓形成術 |
頸部神経根症 | 画像診断 内服から開始する保存治療 椎間孔開放術 |
脊椎圧迫骨折 | 画像診断 骨粗鬆症評価 内服とコルセットから開始する保存治療 Balloon Kyphoplasty 脊椎固定術 |
化膿性脊椎炎 | 画像診断 起因菌精査 抗菌薬治療 脊椎固定術 |
手の外科疾患 | |
上肢外傷(骨折、腱断裂、神経断裂) | 画像診断 観血的整復固定術 経皮鋼線刺入固定術 腱縫合術 腱移植術 腱移行術 神経縫合術 神経移植術 |
上肢外傷後後遺症(偽関節、変形治癒、拘縮) | 画像診断 偽関節手術 矯正骨切り術 拘縮解離術 |
絞扼性神経障害(手根管症候群、肘部管症候群) | 診断 手根管開放術 尺骨神経移行術 |
腱鞘炎(ばね指、ドケルバン病) | 診断 注射 腱鞘切開術 |
変形性関節症(指、手、肘) | 診断 装具療法 関節形成術 人工関節置換術 関節固定術 |
関節リウマチによる上肢変形 | 診断 装具療法 関節形成術 人工関節置換術 関節固定術 |
手関節尺側部痛 | 画像診断 装具療法 尺骨短縮骨切り術 TFCC縫合術 TFCC再建術 |
上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎 | 診断 デブリドマン |
難治性骨折 小児疾患 | |
難治性骨折、偽関節 | 画像診断、治療方針の決定、偽関節手術 |
骨端線損傷、骨端線早期閉鎖 | 画像診断、治療方針の決定、経皮的鋼線刺入術、観血的整復固定術、変形矯正手術、骨延長手術。 |
外傷後変形治癒 | 画像診断、治療方針の決定、変形矯正手術、骨延長手術。 |
発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼) | エコー検査、画像診断、装具治療、牽引治療、観血的脱臼整復手術。 |
大腿骨頭すべり症 | 画像診断、治療方針の決定、観血的整復固定手術。 |
ペルテス病 | 画像診断、治療方針の決定、装具治療、観血的整復固定手術。 |
小児ばね指、握り母指症 | 画像診断、治療方針の決定、装具治療、腱延長手術。 |
多指症、多趾症 | 画像診断、治療方針の決定、多指(多趾)切除手術。 |
特発性側弯症 | 画像診断、治療方針の決定、装具治療。 |
環軸関節回旋位固定 | 画像診断、治療方針の決定、装具治療、牽引治療。 |
筋性斜頸 | 画像診断、治療方針の決定、装具治療、筋解離手術。 |
脳性麻痺 | 画像診断、治療方針の決定、装具治療、腱延長手術、関節解離手術。 |
骨系統疾患 | 画像診断、治療方針の決定、装具治療、骨延長手術。 |
学童期のスポーツ障害 | 画像診断、治療方針の決定、装具治療、手術療法、リハビリテーション。 |
外傷 | |
関節内骨折 | 画像診断、治療方針の決定、手術。 |
粉砕骨折 | 画像診断、治療方針の決定、手術。 |
開放骨折 | 画像診断、治療方針の決定、手術。 |
骨盤輪・寛骨臼骨折 | 画像診断、治療方針の決定、手術。 |
脊椎外傷 | 画像診断、治療方針の決定、手術。 |
特色・強み
外傷:救命センターが併設していますので、四肢体幹の重度外傷に対応しています。
脊椎:脊椎固定術の低侵襲化を目指しています。
手の外科:局所麻酔・伝達麻酔を用いた日帰り・短期入院手術をおこなっております。変形に対するコンピューターシミュレーションによる正確な矯正手術をおこなっております。
小児整形外科:当院では小児科と緊密に連携を取り、運動発達や運動機能障害の診察を行っております。15歳未満のお子様は小児科病棟に入院していただき、小児科の医師とともに治療に当たらせていただいております。また、大阪府立母子医療センターとも緊密な連携を取っております。
主な手術・検査・設備等
脊椎除圧術
背骨の中で圧迫を受けている脊髄~馬尾神経の周囲の組織を削り圧迫を緩めます。
脊椎固定術
不安定な脊椎を金属と自分の骨を使い固定します。
Balloon Kyphoplasty
脊椎圧迫骨折の治癒不良時、骨折した背骨の中にセメントを詰めて安定させます。
椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)
椎間板を分解する酵素を注入してヘルニアの縮小を期待します。 10分程度で終了します。
観血的整復固定術
観血的整復固定術とは、骨折に対して、皮膚を切開して直視下に骨を正常な位置に戻して、固定材料を用いて固定する手術です。強固な固定ができれば、比較的早く日常生活に復帰することができます。
腱縫合術
切れた腱同士を糸で縫ってつなげる手術です。手術の後、一定期間ギプスやシーネで固定します。特に屈筋腱(指を曲げる腱)は手術や術後のリハビリが難しいとされ、手の外科専門医による治療が望まれます。
神経縫合術
切れた神経同士を糸で縫ってつなげる手術です。細かい作業となるため、顕微鏡下に行う専門性が要求される手術となります。
矯正骨切り術
変形治癒骨折に対して、コンピューターシミュレーションによる正確な矯正手術を行っております。
手根管開放術
手根管開放術とは、原因になっている横手根靭帯を切って、正中神経の圧迫をとる手術です。局所麻酔で入院せずに手術しています。
腱鞘切開術
腱のスムーズな動きを妨げている腱鞘を切離します。局所麻酔で入院せずに手術しています。
母指CM関節症に対する手術
力が必要な方には関節固定術を行います。関節固定術は痛みのある関節を固定材料で固定し、疼痛をとる手術です。力は入りやすくなりますが、動きは制限されます。動きを優先する方には関節形成術を行います。関節形成術は、衝突する骨を切除し、腱などで安定化をはかる手術です。どちらの手術も、術後は3週間程度の外固定が必要です。
へバーデンに対する手術
自壊を繰り返す粘液嚢腫に対しては、関節包や骨棘を切除することで嚢腫が消退する手術を行っております。変形や持続する疼痛に対しては固定術や形成術を行います。
関節リウマチによる上肢変形
関節破壊の程度に応じて、関節形成術や関節固定術をおこないます。
手関節尺側部痛
尺側手根伸筋腱腱鞘炎や三角繊維軟骨複合体(TFCC)損傷や尺骨突き上げ症候群などが原因で起こります。原因をはっきりさせた上で、保存治療や手術治療を行っております。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)に対する手術
疼痛の原因と考えられる短橈側手根伸筋起始部の変性箇所を切除します。小皮切で短期入院での手術を行います。
イリザロフ法骨延長
リング型の創外固定器を四肢に装着し、骨切りを行って、骨の延長や変形の矯正を行います。様々なパーツを組み合わせることであらゆる変形の矯正が可能です。
エコー検査
発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の診断にはエコーを用いております。エコーを用いることで放射線への被ばく量を抑えることが出来ます。
関節鏡手術
関節鏡を用いて関節内の骨折や半月板損傷の治療を行っております。関節鏡を用いることで正確に損傷部位の治療を行うことが出来ます。(ただし、当科では前十字靭帯再建術、後十字靭帯再建術は行っておりません。)
エコー下アキレス腱皮下縫合術
エコーでアキレス腱や神経を確認しながら非常に小さな切開のみでアキレス腱の縫合を行います。術後の癒着が少なく、早期に足関節の動きが回復します。
低侵襲外反母趾手術(DLMO法)
約1cmの切開で中足骨の切開を行い、ワイヤーで固定を行う、低侵襲な外反母趾の手術です。
実績
手術実績
2020年
脊椎 | 174 |
上肢・手 |
108 |
下肢 | 27 |
外傷 |
285 |
リウマチ | 16 |
スポーツ | 4 |
小児 | 33 |
腫瘍 | 13 |
計 | 660 |
2019年
脊椎 |
230 |
上肢・手 |
175 |
下肢 | 61 |
外傷 | 430 |
リウマチ | 8 |
スポーツ | 12 |
小児 | 27 |
腫瘍 | 17 |
計 | 960 |
2018年
脊椎 | 278 |
上肢・手 | 161 |
下肢 | 44 |
外傷 | 353 |
リウマチ | 0 |
スポーツ | 14 |
小児 | 19 |
腫瘍 | 16 |
計 | 885 |
2017年
脊椎 | 242 |
上肢・手 | 122 |
下肢 | 85 |
外傷 | 339 |
リウマチ | 10 |
スポーツ | 5 |
小児 | 19 |
腫瘍 | 10 |
計 | 832 |
大腿骨近位部骨折の手術実績と手術待機期間
大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折、転子部骨折)は主に骨粗鬆症を基盤にした高齢者の骨折で、70歳以上の女性に多く見られます。室内でつまずくなどの軽微な外傷でも起こり、これをきっかけとして寝たきりになりやすいです。最近の統計では寝たきりの原因の主な原因の一つです。
骨折すると痛みにより歩けなくなり、すでに存在する呼吸・循環器系、神経系の異常を増悪させて予後不良となります。大腿骨頚部骨折の死亡率は受傷から3ヵ月後で7.7%、1年後で13.6%、5年後で32.0%といわれています。
骨折をきっかけとした寝たきりを防止し、この死亡率を減らすためには受傷早期(48時間以内)の手術が有効であるとされています。当院では2020年から75%を超える患者さんに48時間以内に手術を行っています。
手術実績
大腿骨近位部骨折(頚部骨折、転子部骨折)の一例
78歳 右大腿骨頚部骨折
骨折部の転位が大きいため、受傷翌日に人工骨頭置換術を施行、手術翌日には車椅子に乗ることができ、術後7日後には歩行器歩行となり、リハビリ病院に転院
地域の医療関係者の方へ
当科の特徴は充実した脊椎、手の外科、小児整形、四肢外傷の診療体制ですが股関節外科や腫瘍、リウマチ、スポーツ整形など担当不在の分野もありご紹介頂いても対応に限界がある場合もあります。その際はご容赦下さい。 リハビリを中心とした保存療法、生活指導や疾病予防、骨粗鬆症の薬物治療などは積極的に逆紹介しますのでよろしくおねがいします。
地域の患者さんへ
今まで受けてきた治療情報は多いほどありがたいですし、迅速な診断や治療方針決定に役立ちます。是非治療経過の紹介状や各種画像検査結果をお持ちください。
研究発表
令和元年度
開催日 | 学会等 | 演題 | 演者 |
4月5日-4月6日 | 中部日本整形外科災害外科学会・学術集会 | 骨破壊の著しい胸椎感染性脊椎炎に対する経皮的椎弓根スクリュー固定の小経験 | 久野 亜積実 |
4月5日-4月6日 | 中部日本整形外科災害外科学会・学術集会 | 鎖骨骨折に腕神経叢麻痺を合併した一例 | 金本 岳 |
4月18日-4月20日 | 日本脊椎脊髄病学会 | 骨転移登録システム構築には脊椎外科医の積極的な関わりが必要である | 河野 譲二 |
5月16日-5月17日 | 日本形成外科学会総会・学術集会 | 下腿以遠の開放骨折に対する感染率の検討 | 川本 匡規 |
5月8日-5月10日 | 日本整形外科学会学術集会 | 開放骨折や骨髄炎による骨欠損に対するModern Papineau法の治療成績 | 大野 一幸 |
6月1日 | 大阪骨折研究会 | 脛骨骨幹部骨折に合併した 腓骨骨折の治療成績 | 山川 大輔 |
6月1日 | 大阪骨折研究会 | トラブル症例に学ぶ⑦-足関節周辺骨折の手術時期- | 大野 一幸 |
6月1日 | 大阪骨折研究会 | 3期的手術で治療したPilon骨折の経験 | 川本 匡規 |
6月12日,6月14日-6月16日 | 日本リハビリテーション医学会学術集会 | 下肢長管骨開放骨折の治療成績 | 大野 一幸 |
6月27日-6月29日 | 日本骨折治療学会 | 後方成分の転位を伴う脆弱性骨盤輪骨折に対する手術加療の検討 | 川本 匡規 |
6月27日-6月29日 | 日本骨折治療学会 | 下肢長管骨開放骨折の患者立脚型評価による治療成績 | 大野 一幸 |
6月27日-6月29日 | 日本骨折治療学会 | 下肢長管骨開放骨折の治療成績 | 久野 亜積実 |
6月27日-6月29日 | 日本骨折治療学会 | 橈骨遠位端骨折(AO/OTA typeC)に対して創外固定を併用した内固定の治療成績 | 亀山 貞 |
6月27日-6月29日 | 日本骨折治療学会 | ハイブリッド手術室は安定した寛骨臼骨折の治療成績に寄与する | 川本 匡規 |
6月27日-6月29日 | 日本骨折治療学会 | 胸骨骨折に対する手術治療成績 | 山川 大輔 |
6月27日-6月29日 | 日本骨折治療学会 | 開放性距骨完全脱臼の1例 | 金子 正憲 |
6月27日-6月29日 | 日本骨折治療学会 | 脛骨遠位骨幹部骨折に対する髄内釘固定術の治療成績 | 大野 一幸 |
6月27日-6月29日 | 日本骨折治療学会 骨盤輪・寛骨臼骨折研究会 | 寛骨臼両柱骨折に膀胱直腸障害を伴う仙骨骨折(Denis Zone 3)を合併した症例の検討 | 川本 匡規 |
7月1日 | 南大阪感染症研究会 | MRSAによる軟部組織感染症に対する抗菌薬治療 | 川本 匡規 |
7月6日 | 関西救急整形外傷シンポジウム | 三期的手術で加療したPilon骨折の経験 | 久野 亜積実 |
7月12日-7月14日 | 日本重度四肢外傷シンポジウム | 救急ワークステーション併設による四肢開放骨折への対応結果 | 亀山 貞 |
8月1日 | 宮城骨折治療研究会 | 安全に治療を行うために-骨折手術における時間の問題- | 大野 一幸 |
9月14日 | 関西がんチーム医療研究会 | 脊椎後方要素への転移巣に対して手術を要した3例の検討 | 河野 譲二 |
11月1日 | 南大阪整形外科談話会 | 脛骨高原骨折に骨幹部骨折を合併した2例 | 久野 亜積実 |
8月31日 | 大阪整形外科症例検討会 | 脛骨骨折に対する髄内釘固定術の治療成績 | 大野 一幸 |
11月1日 | 南大阪整形外科談話会 | 脛骨高原骨折に骨幹部骨折を合併した1例 | 久野 亜積実 |
11月1日 | 南大阪整形外科談話会 | 当院の開放骨折の治療成績 | 大野 一幸 |
8月31日 | 大阪整形外科症例検討会 | night stick fractures | 亀山 貞 |
9月14日 | 関西がんチーム医療研究会 | 脊髄麻痺を生じ手術を施行した乳癌脊椎転移症例の機能予後 | 河野 譲二 |
9月20日-9月21日 | 中部日本整形外科災害外科学会 | 脊椎後方要素への骨転移に対して 手術を要した症例の検討 | 山川 大輔 |
9月16日-9月22日 | Asia pacific orthopaedic association, Foot & Ankle section | Fibula lengthening and distal medial tibial hemiepiphysiodesis after traumatic premature closure of distal fibular growth plate: A case report | Sugita A |
9月16日-9月22日 | Asia pacific orthopaedic association, Foot & Ankle section | A comparative study between femoral neck system and multiple cannulated screws for fixation of nondisplaced intracapsular femoral neck fractures in adults. | Hisano A |
10月2日-10月4日 | 日本救急医学会総会・学術集会 | 大腿動静脈の操作を伴う骨盤骨折手術における静脈血栓塞栓症の検討 | 川本 匡規 |
11月1日 | 第102回 南大阪整形外科談話会 | 鼠径ヘルニア術後早期の寛骨臼両柱骨折の治療経験 | 川本 匡規 |
11月9日 | 堺骨折手技検討会 | フックプレートによる肩峰骨折 | 山川 大輔 |
11月21日 | 日本小児整形外科学会 | 小児脛骨骨幹部骨折変形癒合に対して創外固定器で加療した1例 | 大野 一幸 |
11月21日-11月23日 | 日本小児整形外科学会学術集会 | Cerclage wiring後に骨壊死が生じたと考えられた小児大腿骨近位骨幹部骨折の1例 | 杉田 淳 |