診療科腎臓内科
更新日:慢性腎臓病のある生活を守るために
現在、日本では成人の約8人に1人の方が、慢性腎臓病を有するといわれ、生活習慣病の1つだと考えられております。腎臓病の病気を把握し診断するため、血液検査や尿検査に加え、腎臓の細胞を採取する腎生検を行い、早期診断・早期治療に努めております。また、新たに透析治療が必要となった患者さんに対しては、専門看護師や管理栄養士、薬剤師などの多・他職種と連携して、より良い治療方法を検討します。また、手術や他の病気で入院を必要とされる透析患者さんには、各科との連携の上で診療を行っております。
腎臓内科部長
倭 成史
対応疾患
疾患名 | 診療内容 |
---|---|
腎疾患 | 検尿異常、慢性糸球体腎炎・ネフローゼ症候群、膠原病・血管炎や血液疾患に伴う二次性糸球体疾患、遺伝性腎疾患(常染色体優性多発性嚢胞腎に対するトルバプタン導入、ファブリー病に対する酵素補充療法、アルポート症候群など) |
慢性腎臓病 | 保存的治療、透析バスキュラーアクセス造設(自己血管内シャント、動脈表在化手術)、腎代替療法(血液透析・腹膜透析)の選択・導入、維持透析の合併症 |
急性腎障害 | 脱水、薬剤、感染症、手術などにより生じた急性腎障害 |
電解質異常 | Na、K、Caの異常など各種電解質異常 |
透析シャント機能不全 | 透析患者さんのシャント狭窄、閉塞に対してのシャントPTA |
腹膜透析 | 腹膜透析患者さんの外来、入院加療 |
特色・強み
内シャント造設手術
・腎生検:検尿異常や急性腎障害に対して、年間50-70例のエコーガイド下腎生検を行い、所見に基づいて治療方針を決定しています。
・透析バスキュラーアクセス造設:入院での自己血管内シャント、動脈表在化手術を当科で施行しております。
・体外循環:救急集中治療科や臨床工学科と連携し、必要時は迅速に対応できるような体制をとっています。
・透析室10床(うち2床は個室で感染症対応可能)と集中治療室での治療が可能で、通常の血液透析(HD)のほか、血液濾過透析(HDF)・持続緩徐式血液濾過透析(CHDF)、血漿交換(PE, DFPP)、腹水濾過濃縮再静注療法(CART)などに対応しています。
・療法選択外来(週4回の予約外来枠があり、個室での面談を行っています)
腎臓の機能が低下すると、最終的には腎臓に変わる治療方法が必要となります。腎臓に変わる治療方法(腎代替療法)としては、血液透析、腹膜透析、腎移植があります。この外来では腎臓専門医と、専門の看護師が、まず腎臓を長持ちさせる方法を説明し、残存機能を守るお手伝いから開始していきます。その後、腎代替療法が必要になった場合、患者さんの精神的サポートをしながら、生活面などにも配慮しつつ正しく情報提供させていただきます。患者さんのご希望や思いに寄り添いながら、一緒に治療方法を考えていきます。ただし、腎移植は当院では対応できませんので、対応施設に紹介させていただきます。
主な手術・検査・設備等
腎生検
腎生検とは、腹部に生検針を刺し、腎臓の組織の一部を採取する検査です。様々な腎疾患の原因や病態を把握し、診断や治療方法を決定するために必要な検査です。
バスキュラーアクセス手術
シャントに代表される血液透析をされている患者さんが透析を行うための特殊な血管です。当科では自己血管内シャント、動脈表在化術を行っております。
シャントPTA
血液透析をされている患者さんが使用しているシャントが狭窄や閉塞した場合にバルーンで膨らませる治療です。放射線診断科と共同で行っています。
腹膜透析関連手術
腹膜透析を選択された患者さんに対して腹膜透析カテーテルの挿入や出口部作成、出口部変更などを外科と共同で行っています。
実績
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
腎生検 | 74 | 65 | 51 |
血液透析導入 | 56 | 58 | 60 |
腹膜透析導入 | 2 | 6 | 19 |
透析バスキュラーアクセス手術 | 54 | 63 | |
シャントPTA | 1 | 17 | 73 |
腎代替療法選択外来受診患者数 | 26 | 83 | 55 |
腎代替療法選択外来
日本では毎年約4万人以上の腎不全患者さんが腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)を必要としています。
これら3つの治療法はそれぞれに特徴があり、患者さんとご家族にその特徴を理解してもらった上で治療法を決定していきます。
その際には治療法の違いのみならず、患者さんの価値観や生活スタイルも考慮する必要があり、当院では医師、看護師、管理栄養士と患者さん、ご家族が相談しながらこの治療法を決定していきます。
どの治療法を選んでいただいても当院ではできる限りのサポートをしますが、どの治療法を選ぶかによってその後の生活が変わりますので、当院では患者さんが今後ご希望される生活に重点を置いて治療法を一緒に考えています。
腎代替療法が必要と言われてもすぐには受け入れられないケースや聞きなれない透析治療を理解しきれないことも多々あります。そのため、当院では患者さんが納得できる治療法を選択できるまで、必要があれば何度でも腎代替療法について説明します。また、ご相談も受け付けます。
当院では腎機能が低下し腎代替療法が必要となったとしても、その後の生活がより良いものとなるようにスタッフ一同サポートさせていただきますので、いつでもお気軽にご相談ください。
当科での研修を希望される先生方へ
当院では指導医が親身にサポートする体制が整っており、内科医としてはもちろん、腎臓内科医として必要な実践的な臨床スキルを身につけることができます。症例数も多く、忙しいながらも充実した毎日を過ごすことができワークライフバランスはバッチリです。そして、臨床のみならず臨床研究にも積極的に取り組み、学会発表や論文作成も行っています。
当科は腎移植を除くすべての腎臓内科領域の疾患に対応しており、さらに2022年度よりシャント手術、シャントPTA、腹膜透析診療を拡充し、専攻医でもしっかりと経験できる体制になっています。
当科での研修に興味のある方はぜひ一度見学にいらしてください。
関連リンク
地域の医療関係者の方へ
腎生検、血液浄化療法などに対する豊富な経験を活かし、急性、慢性にとらわれず、両者の接点を探り、さまざまな角度から病態に即した治療戦略に基づいた治療を行います。また、多・他職種で腎機能悪化時の治療や日常生活支援や腎代替療法の意思決定支援を行い、地域の医療機関の皆様と連携して患者さんを支援していきます。
当科では病診連携の取り組みとして、他の医療機関の医師や看護師からの相談に専門医が直接対応可能なかかりつけ医と当院をつなぐホットラインを開設していますので日々の診療にご活用いただければ幸いです。詳細は関連リンクからご覧ください。
地域の患者さんへ
腎臓病は入院、外来をとわず、さまざまな段階で患者さんと医療スタッフとの信頼と連携が必要な病気です。自覚症状がないのが、腎臓病の特徴ですので、「もっと早く受診していれば、良かった」という患者さんの声をよく伺います。体がお元気で自覚症状がなくても、一度診察を受けてください。私たちは、皆様の腎臓と元気な日常生活を守るお手伝いをさせていただきます。
研究発表
令和3年度
開催日 | 学会等 | 演題 | 演者 |
---|---|---|---|
9月11日 | 第233回日本内科学会近畿地方会 | TAFRO症候群の治療中にクリプトコッカス脳髄膜炎を合併した1例 | 横川眞帆、新井達也、橋本真、森本まどか、倭成史 |
9月11日 | 第233回日本内科学会近畿地方会 | ニボルマブによる免疫関連有害事象(irAE)で続発性副腎不全、甲状腺機能低下症を来した一例 | 三谷和可、古田寛人、橋本真、新井達也、森本まどか、倭成史 |
9月11日 | 第233回日本内科学会近畿地方会 | 肺野の浸潤影と高血圧を伴った高度腎機能障害の一例 | 入彩加、野津翔輝、久瀬雄介、三谷和可、齋藤梨奈、向井耕平、橋本真、森本まどか、倭成史 |
12月4日 | 第234回内科学会近畿地方会 | SARS-CoV-2ワクチン接種後、肉眼的血尿を伴い再燃したIgA腎症の一例 | 岸具宏、 森本まどか、野津翔輝、橋本真、向井耕平、齋藤梨奈、倭成史 |
12月4日 | 第234回内科学会近畿地方会 | 膜性腎症に顕微鏡的多発血管炎を合併した1例 | 山中諒、齋藤梨奈、向井耕平、野津翔輝、橋本真、森本まどか、倭成史 |
3月12日 | 第235回内科学会近畿地方会 | 急性経過により死亡に至った抗PRA2R抗体陰性膜性腎症の1例 | 上野裕美子、村田賢哉、橋本真、野津翔輝、森本まどか、倭成史、安原裕美子 |
3月12日 | 第235回内科学会近畿地方会 | 外傷性くも膜下出血後の低Na血症に対してフルドロ コルチゾンとトルバプタンの併用が有用であった1例 | 大塚陽平、野津翔輝、斎藤梨奈、 向井 耕平、橋本真、森本まどか、倭成史 |
9月12日 | 第95回大阪透析研究会 | 急性腎盂腎炎の軽快後に急性腎障害を呈した一例 | 秋山沙由里、野津翔輝、三谷和可、 向井耕平、齋藤梨奈、橋本真、森本まどか、 倭成史、金万和志 |
10月16日 | 第51回日本腎臓学会西部学術大会 | 急性腎不全を契機に診断に至ったIgD型多発性骨髄腫の1例 | 古田寛人、橋本真、齋藤梨奈、向井耕平、野津翔輝、森本まどか、倭成史、松浦愛 |
10月17日 | 第42回日本アフェレシス学会シンポジウム12:救急・集中治療領域におけるアフェレシス | DICを併発した敗血症性ショックに対するPMX-DHPとリコンビナントトロンボモジュリン併用療法 | 倭成史 |
1月29日 | 第45回IgA腎症研究会学術集会 | COVID-19ワクチン接種後に肉眼的血尿を呈したIgA腎症5症例の検討 | 森本まどか、齋藤梨奈、向井耕平、野津翔輝、橋本真、倭成史 |
2月12日 | 第40回日本アフェレシス学会関西地方会アフェレシスyear in review 2021 救急・集中治療領域 | DICを併発した敗血症性ショックに対するPMX-DHP+リコンビナントトロンボモジュリン併用療法 | 倭成史 |
令和4年度
開催日 | 学会等 | 演題 | 演者 |
---|---|---|---|
9月10日 | 第237回内科学会近畿地方会 | 初診時蜂窩織炎と診断されたカルシフィラキシスの一例 | 羽田美沙祈・村田賢哉・森本まどか・倭 成史 |
令和5年度
開催日 | 学会等 | 演題 | 演者 |
---|---|---|---|
6月9日 | 第66回日本腎臓学会学術総会 | ラニムスチン投与後に糸球体と尿細管上皮にkaryomegalic changeを認めた一症例 | 三谷和可、河村勇志、野津翔輝、岩田幸真、森本まどか、倭成史 |
6月9日 | 第66回日本腎臓学会学術総会 | ラニムスチン投与後に糸球体と尿細管上皮にkaryomegalic changeを認めた一症例 | 三谷和可、河村勇志、野津翔輝、岩田幸真、森本まどか、倭成史 |
6月9日 | 第66回日本腎臓学会学術総会 | CKD患者におけるダパグリフロジン10mgがHb値に与える影響 | 河村勇志、岩田幸真、三谷和可、野津翔輝、森本まどか、倭成史 |
6月9日 | 第66回日本腎臓学会学術総会 | SGLT2阻害薬開始時におけるeGFR dipと尿蛋白がその後のeGFR変化量と関連する | 三谷和可、岩田幸真、河村勇志、野津翔輝、森本まどか、倭成史 |
9月16日 | 第53回日本腎臓学会東部学術大会 | 右片側性胸水貯留を伴った急激な腎機能障害の一例 | 金原充志、野津翔輝、河村勇志、玉井慎二郎、三谷和可、岩田幸真、森本まどか、倭成史 |
9月17日 | 第53回日本腎臓学会東部学術大会 | チアマゾールの関与が疑われる顕微鏡的多発血管炎の一症例 | 鈴木美佐季、野津翔輝、三谷和可、岩田幸真、森本まどか、倭成史 |
9月17日 | 第53回日本腎臓学会東部学術大会 | 初診時に腎クリーゼと血栓性微小血管症を合併した強皮症の2例 | 宮本佳奈、野津翔輝、三谷和可、岩田幸真、森本まどか、倭成史 |
著書
年 | 題名 | 著者 | 著書・誌名 |
---|---|---|---|
2023 | The effect of dapagliflozin on uric acid excretion and serum uric acid level in advanced CKD. | Iwata Y, Notsu S, Kawamura Y, Mitani W, Tamai S, Morimoto M, Yamato M | Scientific Report |
2023 | Diabetic nephropathy with marked extra-capillary cell proliferation: a case report | Morimoto M, Namba-Hamano Tomoko,Notsu S, Iwata Y, Yasuhara Y, Yamato M, Isaka Y | BMC Nephrol |
2023 | 腎サポートとアフェレシス:Kidney Replacement TherapyはRescueやRecoveryとしての効果も有しうるのか? | 倭 成史 | 日本アフェレシス学会雑誌 |