診療科心臓血管外科
更新日:あらゆる循環器疾患に24時間対応
堺市立総合医療センターにおいて心臓血管外科は平成27年7月に新設となりました。命にかかわる突然の病気に新しい医療機器を導入し、堺市では初めてのハイブリッド手術室を設置しています。
心臓血管外科と循環器内科とが一体となったハートチームとして24時間緊急手術・治療体制を整えて心臓や血管の治療に取り組んでいます。
堺市のみならず大阪南部地域の循環器医療の拠点となるよう日々の臨床に邁進したいと考えております。今後ともどうかよろしくお願い申し上げます。
心臓血管外科部長
岩田 圭司
対応疾患
虚血性心疾患
狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患に対して冠動脈バイパス術を行っています。患者さんの状態を考慮した上で心拍動下冠動脈バイパス術を第一選択にしています。また心筋梗塞に合併する心室中隔穿孔、左室破裂、僧帽弁乳頭筋断裂に対する緊急手術にも対応しております。左室瘤や虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対しては、左室形成術、僧帽弁形成術を行っています。
心臓弁膜症
弁膜症に対しては、弁形成術ならびに人工弁置換術を行っております。僧帽弁閉鎖不全症に対しては僧帽弁形成術を積極的に行っております。大動脈弁疾患では人工弁置換術が主となります。人工弁には金属や炭素素材でできた機械弁とウシやブタの生体組織を用いた生体弁の二種類があります。それぞれの人工弁の長所・短所を理解していただいた上で患者さんの年齢やライフスタイルを考慮し決めさせていただきます。
大動脈疾患
1)大動脈瘤
どんな病気?
大動脈瘤は、人間の体の中で一番太い血管である大動脈が瘤状に腫れる病気です。大きくなると破裂して命に関わる重篤な疾患です。ほとんどの方が破裂直前まで無症状で、検診や他の病気の診察で偶然見つかることが多い病気です。腹部大動脈や弓部大動脈(右図)に生じる頻度が高くなっています。高血圧や喫煙歴のある中高年以上の方は、一度CTなどの検査を受けられる事をお勧めします。
治療は?
・人工血管置換術:
従来この病気では、破裂する前に人工血管に取り替える手術が行われます。胸やお腹を切開して直接動脈瘤を切除する、確立された方法です。体を大きく切開し、人工心肺装置を使用する場合もあり、ご高齢や他にご病気をお持ちの患者様には、体の負担が大きくなることがあります。
・ステントグラフト内挿術:
ステントグラフトとは、金属のバネ(ステント)と人工血管(グラフト)を組み合わせて作られた、大動脈の血管内治療(カテーテル治療)用のデバイスです。バネを縮めて細長い棒のような状態にして、太ももの付け根の動脈から血管内に進めて、正常な血管同士を動脈瘤を超えて橋渡しするように留置します。それにより動脈瘤に血圧がかからなくなるため、破裂を予防できます。胸やお腹を大きく切開することなく動脈瘤の治療が可能です。動脈瘤の場所や血管の形によっては、ステントグラフトのみでの治療が困難な場合がありますが、近年の技術の進歩によって、カテーテル治療可能な領域が増えています。
当院では
大動脈ステントグラフト治療を行うためには、外科的な手技と正確な血管内操作を行う必要があります。当院では据え置き型透視装置を手術室に完備(ハイブリッド手術室)しており、高度な大動脈治療を行うことが可能です。近年の血管内治療技術の発達によって、動脈瘤治療の選択肢が増えています。当院では患者さん一人ひとりに合った治療法を考えていきます。
2)大動脈解離
どんな病気?
大動脈の壁は、内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。高血圧などが原因で内膜に亀裂(エントリー)が出来てしまい、そこから中膜の層に血液が流れ込むことで、もともと血液が流れていた真腔と新しくできた偽腔の、“2枚おろし”になってしまいます。血管が裂けるために胸の前や背中に激しい痛みが起こります。大動脈の外側の壁が薄くなっているため、破裂したり(心タンポナーデ、血胸)、本来の血流を妨げることでいろいろな臓器に障害(脳梗塞、心筋梗塞、腸管壊死、腎梗塞、下半身麻痺など)を起こすことがあります。急激に発症して、命に関わる重篤な疾患です。大動脈解離には、心臓の近くの大動脈が裂けてしまっているA型解離と、背中に近い大動脈以下が裂けてしまうB型解離とに分類されています。
治療は?
・A型解離:
特殊な場合を除いて、緊急手術(人工血管置換術)が必要になります。心臓近くの大動脈をエントリーごと切除して、人工血管に取り替えます。人工心肺装置を使用した、開胸手術となります。
・B型解離:
多くの場合は内科的治療(2−3週間の安静と降圧)が行なわれます。しかし、2−3割の患者さんでは、急激な大動脈の拡大や臓器の血流不足、治らない強い痛み、治療に反応しない高血圧が認められ、発症して2週間以内に治療が必要になります。従来、B型解離の手術成績は良好とはいえない状況でしたが、ステントグラフトの登場で近年、治療成績が向上しています。大動脈の内膜の裂け目(エントリー)をステントグラフトでふさぐことで、本来の血流を回復することが出来ます。また、B型解離を起こしてから何年も経つと、手がつけられない程広範囲に大動脈が瘤化する場合があります。そのような患者さんにも比較的早い段階でステントグラフト治療を行う研究が進んでいます。
当院では
大動脈解離は非常に複雑で、あらゆる病態が起こりうる疾患です。当院では、外科手術及び血管内治療を駆使して、大動脈解離に対してトータルに対応します。
不整脈疾患
弁膜症、或いは虚血性心疾患、大動脈瘤に合併した心房細動に対しては、脳梗塞予防及び心機能向上のために積極的に不整脈手術(Maze手術)を行います。
末梢血管疾患
閉塞性動脈硬化症、急性下肢或いは上肢動脈閉塞、血管外傷等に対して、バイパス手術や血栓除去術、或いは血管内治療を症例に応じて常時対応致します。
実績
2019年度 | 2020年度 | |
手術総数 | 148 | 116 |
開心術 | 82 | 72 |
>先天性 | 1 | 12 |
>弁膜症 | 19 | 15 |
>冠動脈 | 13 | 11 |
>大血管 | 46 | 41 |
>その他 | 3 | 3 |
腹部 | 25 | 25 |
末梢血管 その他 | 41 | 19 |
特色・強み
これまで過大侵襲外科の代名詞であった心臓血管外科手術も、より高い手術後のQuality of lifeの向上を目指した心拍動下冠動脈バイパス術やステントグラフト内挿術といった低侵襲手術が登場し、その手術成績も更に向上し安定してきました。
また循環器内科との密接な連携や、三次救急を担当する救命救急センターの精鋭部隊の救急外科との密な連携をとり、軽傷の症例から超重症疾患症例までの対応が可能です。また手術後は心臓リハビリテーションを積極的にすすめ、早期離床、早期退院、速やかな社会復帰を達成しています。
地域の医療関係者の方へ
かかりつけ医の先生と、患者さんの健康管理、病診連携をより一層すすめていきたいと思っています。心臓や血管に関する疾患が疑われる方がおられましたら、いつでもご紹介ください。心臓血管外科の外来は月・火・木です。また緊急を要する心血管疾患を疑われた際には当院24時間対応循環器ホットラインへお電話ください。
地域の患者さんへ
初めての方や久しぶりに受診される方はかかりつけ医の先生からの紹介状をもらってきていただけると有り難いです。また事前に患者支援センターで予約を取っていただけると診療が一層スムーズに行えます。