大腸がん
大腸がんとは
国立がん研究センターがん情報サービスの2021年がん統計によると、 大腸がんの死亡数は女性では第1位、男性では第2位、男女合わせると第2位となっています。
また、大腸がん患者の数(罹患数)は、男女合わせた総数では第1位となっています。
年齢別の罹患率では40歳を超えたあたりから上昇し、中高年に多く認められます。
まだまだ大腸がんの治療成績は満足できるものではありませんが、がん検診の普及、内視鏡や手術技術の向上、薬物療法の開発など、さまざまな取り組みが良好な結果に結びつくことが期待されます。
診断方法
便潜血検査
便の中に混じった血液を検出する検査法です。大腸がんに対する集団検診として行われます。
大腸内視鏡検査
内視鏡を肛門から挿入し、全大腸を内側から観察します。良性ポリープ(腺腫)や早期がんを切除することもできます。
病期(ステージ)
ステージは、大腸がんが大腸の壁に入り込んだ深さ(深達度)、どのリンパ節までいくつの転移があるか(リンパ節転移の程度)、肝臓や肺など大腸以外への臓器や腹膜への転移(遠隔転移)の有無によって決まります。
内視鏡検査、CT検査などの画像診断で大腸がんの臨床分類ステージが予測され、最終的には、手術で切除された組織を顕微鏡で調べた結果を合わせて病理分類ステージが決定します。この結果は術後の補助化学療法導入の指標などに用いられます。
治療方法
内視鏡治療(消化器内科で実施)
大腸内視鏡を使って大腸の良性ポリープやがんを切除する方法です。
ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)および内視鏡下粘膜下層剥離術(ESD)があります。
腫瘍(良性ポリープやがん)の形や大きさなどに応じて使い分けます。
切除した腫瘍の病理検査の結果によっては、手術による切除が必要となる場合があります。
内視鏡下粘膜下層剥離術(ESD)
外科手術(消化器外科で実施)
手術療法は、大腸がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節を切除します。
リンパ節を切除する範囲(リンパ節郭清)は、がんの部位と手術前に予測したがんの進行度(ステージ)を考慮して決定します。
腸管を切除した後、残った腸管をつなぎ合わせます(吻合)。
直腸がんが肛門に非常に近い場合には、人工肛門が必要となる可能性があります。
結腸がんの手術
周囲のリンパ節をつける形で、がんから10cmほど離れた部位で腸管を切ります。
腸管を切除した後、腸管を吻合します。
結腸切除術(リンパ節郭清)
直腸がんの手術
肛門に近い早期がんの場合、肛門からアプローチしてがんを切除する方法(経肛門的鏡視下切除)があります。
上記以外は結腸がんと同様に、お腹からアプローチしてリンパ節をつける形で直腸を切除します。
直腸を切除した後、直腸と結腸を吻合します。
がんが肛門に非常に近い場合には、肛門を含めてがんを切除する必要があります。この場合には永久人工肛門(ストマ)になります。
低侵襲手術(ロボット支援手術・腹腔鏡下手術)
当院では、患者さんの体の負担を減らすことや、より精密な治療を行うことを目的として、低侵襲手術(ロボット支援下手術・腹腔鏡下手術)を行っています。
腹腔内(腹腔:お腹の壁と臓器との間の空間)に炭酸ガスを入れてお腹を膨らませ、お腹の中を見る内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら、数か所の小さな創から器具(鉗子)を入れて行う方法が腹腔鏡下手術です。
創が小さい、出血量が少ないなどのメリットがあります。
腹腔鏡下手術では、腹腔鏡により従来の開腹手術では見えなかった細かい血管や神経まで見えるので細やかな手術操作が可能です。ただし、腹腔鏡下手術ができるかどうかは、大腸がんの進行状況や体格、以前に行った手術や治療中の病気などで異なります。
近年では、手術支援ロボット『da Vinci -ダビンチ-』を用いた腹腔鏡手術により、より正確で精密な手術が可能になります。
腹腔鏡下手術
化学療法
転移・再発を認めた場合
大腸がんが、肝臓や肺、腹膜、遠くのリンパ節に転移している場合や、外科手術後に再発した場合は、外科手術だけでは全てのがん細胞を完全に切除することができないため、抗がん剤治療を行う必要があります。
抗がん剤の治療薬は「がんの性質」や患者さんの状態やニーズを考慮して適切なものを選択します。
基本的には通院で抗がん剤治療を受けることが可能で、当院ではゆっくりくつろいで、抗がん剤治療を受けていただける外来化学療法室を備えています。
なお、初めて治療を受けられる場合や入院治療が必要な抗がん剤の場合などは入院で治療を行うことがあります。
再発予防として行う場合
外科手術の後でも、病理検査の結果で大腸がんがある程度進行していると判明した場合、再発予防のために抗がん剤治療を一定期間(3~6カ月)行うことがあります。
放射線療法
放射線治療は、主に体の外から放射線を照射して腫瘍を縮小させる方法です。
直腸がんの術前に腫瘍を縮小させる場合や、術後の再発予防で行います。
再発や転移している部位に対して、症状緩和などを目的として行う場合があります。
治療実績
2018 年度 |
2019 年度 |
2020 年度 |
2021 年度 |
2022 年度 |
2023 年度 |
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全手術件数 | 150 | 180 | 181 | 154 | 140 | 146 |
結腸がん | 95 | 91 | 96 | |||
(開腹) | 15 | 13 | 14 | |||
(腹腔鏡) | 80 | 58 | 27 | |||
(ロボット) | 0 | 20 | 55 | |||
直腸がん | 59 | 49 | 50 | |||
(開腹) | 6 | 9 | 1 | |||
(腹腔鏡) | 19 | 16 | 5 | |||
(ロボット) | 34 | 24 | 44 |