膀胱がん

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膀胱がんについて

膀胱がんは、膀胱にできるがんの総称です。
膀胱は骨盤の中にある袋状の臓器で男性では恥骨と直腸の間、女性では恥骨と子宮の間に位置します。腎臓で作られた尿が腎盂・尿管を通って膀胱にたまり体外に排泄されます。この尿の粘膜である尿路上皮からがんは発生します。

膀胱・尿道・膀胱がんの図

膀胱がんの予後

膀胱がんの予後はステージによって大きく変わるのが特徴であり早期発見、早期治療が非常に大事ながんです。

膀胱癌の5年生存率

膀胱癌の5年生存率

症状

膀胱がんは症状のない肉眼的血尿で発見される場合が多いですが、頻尿、排尿時痛、残尿感、切迫した尿意など、膀胱炎の様な症状で見つかる場合もあります。
がんが進行すると排尿困難となる場合や背中の痛み、下肢のむくみが出現する場合もあります。

診断方法

まず尿にがん細胞が含まれているかを調べる尿細胞診という検査や膀胱内を柔らかく細い内視鏡で直接観察する軟性膀胱鏡検査、必要に応じて超音波検査やCT検査を行います。

治療方法

外来での検査にて膀胱内に腫瘍を認める場合や尿細胞診が陽性となった場合はまず診断と治療を兼ねて経尿道的膀胱腫瘍切除術を行い、追加の治療の有無を検討します。
膀胱がんの深達度(がんがどのくらい深くまで及んでいるか)はTa-T4bに分類されます。Ta、Tis、T1を筋層非浸潤性がん、T2-T4を筋層浸潤性がんと分類します。

腎癌の予後

筋層非浸潤性膀胱がん 筋層浸潤性がん
Ta 乳頭状非浸潤性がん、粘膜上皮内にとどまる T2 筋層に到達しているが筋層内にとどまっている
Tis 上皮内がん、粘膜上皮内で広がり肉眼的に同定出来ない場合も多い T3 膀胱周囲の脂肪組織に及ぶ
T3a:顕微鏡で確認できる
T3b:肉眼で確認できる
T1 上皮下結合組織に及ぶ T4 隣接臓器に広がる
T4a:前立腺、精嚢、子宮、膣
T4b:骨盤壁、腹壁

膀胱がんの病期

深達度(T)転移(N/M) 転移なし 転移あり
筋層非浸潤性
膀胱がん
Ta 0a
Tis 0is
T1
筋層浸潤性
膀胱がん
T2
T3
T4a
T4b

筋層非浸潤性膀胱がん
(0期・Ⅰ期)の治療

リスクに応じて経尿道的膀胱腫瘍切除術(+膀胱内注入療法(手術直後に細胞傷害性抗癌剤を単回注入)や膀胱内BCG注入療法(計8回/週1回)の追加治療などを検討。

筋層浸潤性膀胱がん
(Ⅱ期・Ⅲ期・Ⅳ期)の治療

転移がない場合の標準治療は膀胱全摘除術+尿路変向術です。
高齢であったり合併症などで膀胱全摘除術を行えない方に対しては経尿道的膀胱腫瘍切除術や薬物治療、放射線治療などを組み合わせて治療を行う場合があります。
また、転移がある場合には全身化学療法を行います。

ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術

男性では膀胱、前立腺、精嚢、尿道、骨盤内リンパ節を摘出。女性では膀胱、子宮、膣の一部、尿道、骨盤内リンパ節を摘出し、尿路変向を行う手術です。
当院では「ダビンチ」という手術用ロボットを使用して手術を行います。
開腹術と比べ創部は小さく、出血量も少ないのが特徴で低侵襲手術を行うことが出来ているため術後の合併症も減少し入院期間も以前に比べ短くなっています。
主な合併症:尿路感染、麻痺性イレウス

尿路変向術
  1. 回腸導管造設術

    小腸(回腸)の一部を採取して左右の尿管を小腸の端に吻合し反対側の小腸の先端を腹壁に固定し尿を排泄します。最も広く行われている尿路変向術です。
    ストマから継続的に尿が排泄されるため採尿袋をつける必要があります。

  2. 自排尿型新膀胱造設術

    小腸の一部を切り取り尿をためる袋を新たに造設します。この袋に左右の尿管をつなぐ方法です。新膀胱と尿道を吻合することで尿道から尿が排泄できるのが特徴です。
    ただし、尿道にがんの存在が疑われる場合や尿道に再発が予想されるような場合は適応外です。また、自己導尿を必要とする場合があります。

  3. 尿管皮膚ろう造設術

    尿管を直接腹壁に固定し尿の排泄口を造設する方法です。
    左右の尿管を吻合し1本にする方法や左右の腹壁それぞれに尿の排泄口を造設する方法があります。回腸導管に比べ尿路の交通がスムーズでない場合もあり一般的には高齢者の方や合併症がある方などが適応です。

ロボット手術の実際の流れ
  1. 手術の2-4日前に入院してもらい食事調整や尿路変向のストマ位置を決めます。

  2. 全身麻酔で行います。腹部に6カ所、ロボットアームなどを通して操作するための「穴」をあけます。穴は直径1-2cm程度です。また、臍下に4cm程度の切開をし摘出した膀胱を取り出したり、尿路変向を行う時に使用します。

  3. 尿路変向の術式にもよりますが術後2-4日目には食事を再開し状況に応じて歩行も可能です。

  4. 退院後は外来で定期的にCT検査や採血、尿検査を行い再発がないかを確認します

治療実績

2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
経尿道的膀胱腫瘍切除術 115 123 156 161
ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術 19 9 14 16