乳がん

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乳がんとは

現在、乳がんは日本人女性でもっとも多いがんであり、9人に1人が乳がんになる時代です。
比較的治りやすいがんとされていますが、適切な治療を受けない場合、治療が困難になることがあります。

乳がんにはさまざまなタイプがあり、手術だけで完治するものや、ホルモン治療や抗がん剤治療、あるいは分子標的薬治療が必要なものなど、それぞれのタイプに合わせた治療が必要です。
乳がんの治療は今後も進歩することが期待されており、患者さん一人ひとりに適切な治療を提供するため、私たちは努力を惜しまず取り組んでいます。

診断方法

乳がんの疑いがある腫瘍から組織を採取(生検)して病理検査を行い確定診断します。
病理検査では、組織型、組織学的悪性度、ホルモン受容体、HER2受容体、細胞増殖能(Ki-67)などを調べ、乳がんのサブタイプを判定します。
さらにCTやMRIなどの画像検査を行い、遠隔転移の有無や乳がんの広がりを診断し、進行度(ステージ)を決定します。

治療方法

サブタイプや進行度に応じて手術(外科治療)、抗がん剤治療、抗HER2療法、ホルモン治療、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬などの薬物療法を検討します。

手術

乳がんの広がり程度や進行度に応じて手術を検討します。
術式の選択については、患者さんと相談しながら適切な方法を決定します。
標準的にはまず外科治療を行いますが、局所進行している場合や抗がん剤治療が必要な場合は、術前抗がん剤治療から始めることもあります。

乳房切除術

乳頭を含め乳房全体を切除します。
場合によっては、乳頭と皮膚を温存して全乳腺のみを取り除く皮下乳腺全摘術も行います。

乳腺部分切除術(乳房温存術)

乳がんが乳房内に広がっていない場合は、乳腺部分切除術の対象となります。
乳がんと約1~2cm離れた周囲の乳腺組織を切除し、切除したあとの乳腺組織にがんが残っていないか手術中に病理検査を行って、がんが確実に取り切れるまで切除します。

さらに温存した乳房内でがんが再発するのを防ぐため術後に放射線治療を行います。
このようにすれば乳房切除術と同等の治療効果が得られます。
乳房温存術が困難な場合でも、術前抗がん剤治療を行うことで可能になることもあります。

腋窩リンパ節郭清

乳がんは乳房内のリンパ管に沿って、腋窩(わきの下)リンパ節に転移して全身に広がることがあります。

腋窩リンパ節に転移を認めた場合、腋窩リンパ節全体を切除することがあり、これを腋窩リンパ節郭清といいます。
しかし術後には、上肢のむくみや知覚異常、肩関節の可動制限などの合併症が起こることがあります。

センチネルリンパ節生検

乳がんがリンパ管に沿って一番初めに到達(転移)するリンパ節をセンチネルリンパ節といいます。
センチネルリンパ節を摘出(生検)して術中に転移があるかどうか調べ、転移がなければ腋窩リンパ節郭清を省略することができます。

また、センチネルリンパ節への転移が2個までであれば、腋窩リンパ節郭清を省略することがあります。
ただしこれは乳腺部分切除を行った場合に限り、かつ術後に放射線治療を受けられる方が対象です。

薬物療法

乳がんの薬物療法には、内分泌治療(ホルモン治療)、抗がん剤治療、分子標的治療などさまざまな種類があります。

これらの薬剤を組み合わせて、術前、術後あるいは再発時に使用します。
当科では、標準治療はもちろんのこと、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新規治療、術前抗がん剤治療、臨床試験など、多様な治療を実践しています。

病理検査や遺伝子検査の結果に基づいて、どの治療法が効果的かを判断し、治療薬を選択します。
また、がんゲノム医療も積極的に取り組んでおり、OncotypeDXTM検査やがん遺伝子パネル検査を実施し、患者さん一人ひとりに相応しい薬剤を選択して、より効果的で副作用の少ない個別化治療を行っております。

がんゲノムセンター

遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC, Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome)とは

遺伝性腫瘍とは

現在日本では、2人に1人が生涯でがんになり、3人に1人が、がんで亡くなる時代といわれています。
がんの発症原因としては、喫煙、飲酒、食事、感染、紫外線、ストレスなどさまざまな要因が考えられます。

また、5~10%は、生まれつき持っている遺伝子の変化で発症することが原因とされ、このようながんは遺伝性腫瘍といわれています。
遺伝子の病的な変化が親から子へ伝わり、がんになりやすい体質をもたらす可能性があります。

特に、乳がん卵巣がんに関わる遺伝性腫瘍の一つが遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)です。HBOCの疑いがある乳がん患者さんは保険診療で遺伝学的検査が可能となります。
当科では、HBOC外来を開設しています。

遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)外来について

当科では、HBOC外来にて、遺伝専門医や認定遺伝カウンセラー®による遺伝カウンセリングを実施しています。

HBOCを疑われる乳がん、卵巣がん、すい臓がん、前立腺がんの患者様や、その血縁者の方には、BRCA1/2遺伝子検査によりHBOCの確定診断を行っています。
さらに予防的な乳房切除(RRM)や卵管卵巣切除(RRSO)、がんの早期発見のための詳細な検査(サーベイランス)も実施しており、がんを未然に防ぎ、早期発見によってがんの脅威を最小限に抑える努力を行っています。

遺伝性腫瘍外来の流れ

遺伝性腫瘍外来

遺伝カウンセリング

遺伝学的検査

検査結果:陽性

当院での
サーベイランス
開始

(例)HBOCの場合

  • 乳房造影MRI検査
  • マンモグラフィー
  • 婦人科フォロー
  • リスク低減手術(PRSO、PRM)

検査結果:陰性

ご希望があれば追記検査

(マルチ遺伝子パネル検査等)

血縁者への遺伝カウンセリング

乳腺看護外来

当科では、乳がん患者さんに対して、医師の診察後に乳がん看護認定看護師によるサポートを実施しています。

乳がんと診断された患者さんやご家族のお気持ちによりそい、治療を選択するときの迷いや疑問、治療の副作用や後遺症への対処方法の相談などを行っています。
患者さんが大切にしていることをお聞きしながら、これからのことを一緒に考えていきます。

治療実績

2018
年度
2019
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
2023
年度
乳がん手術件数 156 160 146 151 166 188