膵臓がん

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膵臓の腫瘍について

膵臓は、長さが約15cmの横に細長い臓器で、胃の裏側に位置しています。胃と背骨および大血管の間にあるため体表から触れることはできません。膵臓の役割は、①消化液(膵液)の分泌と②ホルモンの分泌の大きく2つに分けられます。ひとつの臓器において消化液とホルモンを同時に分泌する器官は、たくさんある身体の器官の中でも膵臓だけです。
膵臓の病気は、激しい腹痛を伴う膵炎、また膵がんが有名です。膵がんは10万人あたりおよそ30人が罹患する(かかる)非常に稀な疾患ですが、近年は増加傾向にあり、2030年にはがん死亡率の第2位になることが予想されています。膵がんと診断され手術で取り除くことができる患者さんは全体の2~3割であり、そのうち5年以上生きることができる患者さんは1~3割と報告され、早期診断が難しく、悪性度の非常に高い疾患です。

膵臓の病気の種類

膵臓の腫瘍にはさまざまな種類がありますが、膵液の通り道である膵管上皮細胞が腫瘍となったものを膵がん、膵管内に袋状に増生する嚢胞性膵疾患、ホルモンの分泌を行う神経内分泌細胞が腫瘍となったものを神経内分泌腫瘍といいます。以下、膵がん、嚢胞性膵疾患、神経内分泌腫瘍の順に説明します。

膵がんの治療

膵がんに対して唯一根治が期待できる治療は手術で取りきることですが、膵臓の周りには多くの臓器や非常に重要な太い血管が走行しています。また、たんぱく質を溶かす働きを持つ膵臓の特徴的な消化液(膵液)のため膵臓の手術は消化器の手術の中で難易度が高い手術です。また、膵がんは、とても小さな状態でも、血液やリンパの流れにのって肝臓や肺、リンパ節などに転移しやすい特徴があります。そのため手術でがんを残さず切除しえた場合でも、目には見えない小さながんが既に散らばっていて、後で再発することがあります。
現在、切除可能膵がんの治療では、①術前にがん(の広がりについて)を正確に診断し、②手術前にがんに対して化学治療を行うこと(術前化学療法)、③手術で領域リンパ節を含めた適切な切除を行うこと、④手術後に再発予防の目的で補助化学療法をしっかり行うことが重要だと考えられています。

診断(病気がわかるまで)

膵がんはその進展範囲を画像で正確に捉えることが難しく、Dynamic CT(造影剤を使用したCT検査)、MRI、超音波内視鏡検査などの画像検査を組み合わせて診断を進め、最終的には生検検査を行い、病理検査で確定診断を行います。当院では毎週、内科、外科、放射線診断科、病理診断医がほぼすべての症例に対してカンファレンスを行い、膵がんの広がりをできるだけ正確に評価した上で、病状に合った治療計画を立てています。

手術

抗がん剤や放射線治療の発展は目覚ましいものがありますが、手術以外の方法のみで膵がんを治すことは困難な現状です。遠隔転移や腹膜播種がなく、大血管を巻き込んでいない場合など、手術によってがんが遺残なく取り除けると診断された場合に手術治療が勧められます。手術の方法は2つの方法に大別されます。膵頭部にがんができた場合は膵頭十二指腸切除術が、膵体尾部にがんができた場合は膵体尾部切除が選択されます。しかしながら手術を受けるためには、耐術能(心臓や肺機能、栄養状態などが保たれていること)の評価も重要です。当院では決して医師主導の無理な意思決定を促さない目的で、CAG(高齢者機能評価)外来や周術期支援外来という取り組みを行っています。病気と闘うのは一人ひとりの患者さんですので、それぞれの意志決定をできるかぎり真摯にサポートします。

膵頭十二指腸切除の切除範囲

膵体尾部切除の切除範囲

術後補助療法

手術でがんを遺残なく取り除くことができた場合でも、既にがん細胞が浸潤、転移しており、術後に再発してくることがあります。このように細胞レベルで広がっている可能性のあるがん細胞を抗がん剤で治療することを目的として術後に補助化学療法を行います。

嚢胞性膵疾患

嚢胞性腫瘍とは、腫瘍が袋状に大きくなり内部に腫瘍がつくった粘液が貯留したり、腫瘍が壊死した液体が貯留したりするできものをいいます。代表的な嚢胞性膵疾患として、膵管内乳頭粘液腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm;MCN)、充実性偽乳頭状腫瘍(solid pseudopapillary neoplasm;SPN)、漿液性嚢胞腫瘍(serous cyst neoplasm;SCN)などがあります。

膵液の通り道である膵管は、ぶどうの茎のように幹になる大通りといくつにも枝分かれした分枝の部分に分かれます。IPMNは膵管のもっとも内側に存在する上皮細胞に腫瘍が生じ、粘液を分泌することで膵管が嚢胞状に大きくなっていく疾患です。幹にあたる主膵管に腫瘍が発生した場合を主膵管型、分枝に腫瘍が発生した場合を分枝型、両者が混在する場合を混合型と分類されます。IPMNは悪性度が低い腫瘍で、長い間ほとんど変化しない場合も多いですが、嚢胞の内部にしこりができ、いったんしこりが浸潤癌になってしまうと通常の膵がんと同様に転移や再発を起こす場合があります。つまりIPMNに対しては、浸潤癌となる前に切除する必要があります。
当院ではIPMNの患者さんに対しても適宜、Dynamic CT(造影剤を使用したCT検査)、MRI、超音波内視鏡検査などの画像検査を組み合わせて診断を進め、IPMN診療ガイドラインに沿って適切な治療のタイミングを提案します。

主膵管型、分岐型、混合型

神経内分泌腫瘍

膵神経内分泌腫瘍は悪性度が良性から悪性までさまざまであり、治療を一概にひとくくりにできない疾患です。数年経っても変化がない腫瘍もあれば、ほんの数cmの大きさであるにもかかわらず他の臓器に転移してしまうような悪性度の高いものまであります。

膵神経内分泌腫瘍の治療は、患者さんの状況、腫瘍の性質をよく理解して、外科治療に踏み切るタイミング(手術の適応)を判断する必要があります。小さな腫瘍でも積極的に手術をお勧めする場合もありますし、しばらく様子を見ることをお勧めする場合もあります。例えば、他のがんでは手術をお勧めしないような多数の肝転移病変があるような状況でも、神経内分泌腫瘍の場合は肝切除を行うことが患者さんにとって有益と判断されることもあります。

まずは正確な診断に基づいて、一人ひとりの患者さんの状況に応じて適切な治療を行うことが大切です。当院では肝胆膵内科と密に相談・協力し、外科的な治療を行うべきか、内科的な治療を行うべきかなどの方針を決定しています。

当院における膵臓手術件数

2018
年度
2019
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
2023
年度
浸潤性膵肝がん 13 17 16 13 7 12
嚢胞性膵疾患 4 10 4 4 2 1
膵神経内分泌腫瘍 1 4 1 1 2 1
他(外傷/膵炎、他がんの浸透など) 5 11 1 2 2 3
合計 23 42 22 20 13 17