食道がん
食道がんとは
食道は、喉(のど)と胃とをつなぐ長さ約30cmの管状の臓器で、「食道がん」はその内側にある粘膜の上皮から発生します。
食道がんの罹患率は人口の高齢化とともに緩やかに増加しています。
年齢別にみると60-70歳代に多く(全体の約70%)、性別では男性に多く見られますが(男女比が約5:1)、ここ数年は、女性の食道がんが増加しています。
発生の危険因子としては、扁平上皮がんでは喫煙と飲酒が相乗的に作用してリスクが高くなることが指摘されています。
腺がんでは肥満や逆流性食道炎でリスクが高くなるとされています。
日本では食道がんの約90%が扁平上皮がんですが、欧米では腺がんが多く、そのほとんどは胃の近くの食道下部に発生します。
日本でも生活習慣などの欧米化により、食道下部の腺がんが増えています。
症状
症状は、初期は無症状もしくは食べ物を飲み込んだときにわずかにしみる程度であり、検診時に発見されることもあります。進行すると食べ物を飲み込んだときにつかえる、胸や背中の痛み、体重が減少する、むせるような咳、声がかすれるなどの症状が見られます。
診断方法
上部消化管造影検査、上部消化管内視鏡検査、CT検査、PET-CT検査などで食道がんの進行度(ステージ)が決定し、進行度に基づいた治療方法が決められます。
治療方法
治療には大きく分けて内視鏡治療、手術治療、放射線治療、化学療法の4つがあります。
患者さんの希望や年齢、合併症、病気の特性などを考慮しながら、治療法を決定します。
当院では、外科、消化器内科、放射線(診断・治療)科、歯科口腔外科、リハビリテーション科が協力してチーム医療で食道がんの診断・治療を行っています。
内視鏡治療
食道がんに対する内視鏡治療は低侵襲で食道局所への効果に優れた治療です。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、内視鏡で見ながら、食道の内側から「粘膜内のがん」を切り取る方法で0期とⅠ期の一部が対症となります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、病変の下層部に薬剤を注入しながら病変を電気メスで徐々にはぎ取る方法です。
いずれも切除した組織の病理検査の結果、取りきれなかった部分があった場合や、リンパ節転移の可能性が高いと判断された場合は、追加手術や放射線治療、化学放射線療法が必要になります。
外科治療(手術)
食道がんでは、できる場所にかかわらず早い段階からリンパ節転移をおこします。
リンパ節の部位は頸部から腹部まで広範囲にわたります。
通常、胸部食道がんに対する手術は、病巣とともにリンパ節を含む周囲の組織を切除します(リンパ節郭清)。
食道を切除した後には、食事をとることができるように胃や腸などを用いて再建します。
胸部食道がんの手術では、頸部・胸部・腹部の3領域のリンパ節を郭清することがあり、侵襲が大きく、体への負担が大きい手術となります。
近年では、積極的に胸腔鏡や腹腔鏡を用いた傷の小さい手術を原則第一選択としています。
放射線治療
高エネルギーのX線でがん細胞を殺し、「がん」を小さくする効果があります。
放射線治療には治癒を目指す治療(根治照射)と、痛みや出血などの症状を抑え、食べ物の通り道を確保しようとする治療(緩和的照射)があります。
また、放射線治療単独よりも化学療法と併用して行った方がより効果が高いことがわかっており、放射線照射を行いながら、化学療法を同時に投与する方法を化学放射線療法といいます。
周囲の臓器への浸潤があり切除ができない人、手術を望まない人、高齢や合併症などで手術の危険性が高い人などが対象となり、ステージによっては手術治療とほぼ同等の効果が得られたという報告もあり、化学放射線療法を選択することにより、生活の質(QOL)の向上が期待されます。
化学療法
数種類の抗がん剤に加えて2021年からは免疫チェックポイント阻害剤が術後補助療法や進行・再発食道がんで使用できるようになり、食道がんの診療は大きく進歩しました。
遠隔転移を有する進行食道がんに対しても化学療法が奏功し、根治切除が可能となる症例の増加が期待されます。
緩和的治療
進行例においては、嚥下障害、栄養障害、誤嚥・瘻孔による咳嗽などにより生活の質の低下をきたすことが多く、治療の初期から症状緩和や生活の質の維持・改善のための食道がんに特徴的な治療を検討することが求められます。
具体的には食道・気道狭窄や瘻孔に起因する症状の改善を目的とした姑息的治療として化学療法、放射線療法、ステント留置などを行うことがあります。
当院では多職種、多診療科が協力して種々の治療を組み合わせて最大限の治療効果を得られるよう取り組んでいます。
治療実績
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
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件数 | 57 | 49 | 45 | 50 |