Sakai Medical Stories Vol.2 “生き方”を支える透析医療

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Vol.2 “生き方”を支える透析医療
― 腹膜透析で広がる選択肢 ―

腎臓内科の朝比奈 悠太医師は12年のキャリアを持ち、 2025年4月に当院に着任しました。
大阪医療センターで5年間の初期研修・後期研修を行い、その後、大阪大学大学院で約6年間、研究・博士号取得に従事し、現在は腹膜透析を含む腎臓内科診療に取り組んでいます。
「透析を始めたら、これまでの生活は続けられないのではないか」 そんな不安を抱える患者さんに対し、朝比奈医師が大切にしているのは、治療だけではなく“その人らしい日常”を守ること。
腹膜透析を軸に、患者さんの価値観と向き合う腎臓内科の取り組みについて朝比奈医師にお伺いしました。
Q1.そもそも「腹膜透析」って、なんですか?血液透析とは何が違いますか?
腹膜透析は治療液をお腹に入れて老廃物や余分な水分を除去する治療で、自宅で行えるのが大きな特徴です。
お腹の中に治療液を入れて3~4時間貯留した後、お腹の外に出します。
この出し入れを1日2~4回行いますが、貯留している間は自由に活動できます。
一方、血液透析は週3回の通院が基本的に必要で、1回につき約4時間、往復の通院も含めると約5~6時間必要となることが多いです。
腹膜透析と比べると時間的制約が大きいことが挙げられます。
Q2.腹膜透析を選ぶ患者さんの特徴は?
腹膜透析を選択する方は「自分の時間を大切にしたい」「仕事や趣味を続けたい」といった生活の質(QOL)を重視する方が多いです。
血液透析は時間的拘束が大きく、希望する生活スタイルの維持が難しい場合がありますが、腹膜透析は生活感や価値観を尊重した治療選択として喜びの声が寄せられています。
Q3.当院では腹膜透析にどのように取り組んでいるのでしょうか?
当院の透析患者の20~30%が腹膜透析を実施しており、全国平均よりも高い割合となっています。
腹膜透析は以前からある治療ですが、施設ごとに積極性に差があるのが実情です。
Q4.透析治療を選ぶ際、どういった支援をされているのですか?
医療者と患者間でSDM(共同意思決定)を経て、腹膜透析と血液透析の選択を行っております。
どちらを選択しても医師・看護師が連携してサポートします。
患者さんの不安や価値観、趣味や生活背景を丁寧に聞き取り、「続けられる生活イメージ」を一緒に描いていくことで、患者さんに納得・安心して治療選択をしてもらっています。
Q5.血液透析と腹膜透析を組み合わせることもできるんですか?
血液透析と腹膜透析を組み合わせたハイブリッド透析という治療があります。
これは腹膜透析だけでは十分な除去が難しくなった場合に週1回の血液透析を組み合わせる治療です。
当院では外来血液透析を行っておりませんので、血液透析の管理は近隣の透析病院に依頼させていただいております。
Q6.腹膜透析導入後の患者さんのフォローはどのようにされていますか?
初めの1〜2か月を重点的にチェックし、定期外来で状態を確認しています。
ほとんどの患者さんは、この期間を乗り越えると安定して継続されています。
自宅での不安に対しても多職種連携とアプリによるモニタリングでサポートしています。
Q7.腹膜透析の取り組みで大切にしていることは?
丁寧なコミュニケーションです。
最初に勤務した病院では血液透析中心でしたが、腹膜透析が適した患者さんを経験し、当院でも「コミュニケーションを丁寧にすることで対応可能なケースが広がる」と実感できたことがきっかけです。
現在はアプリ・タブレットを活用した情報共有体制も整い、コミュニケーションに役立っています。
Q8.患者さんを支えるチーム体制について教えてください。
患者さんからの連絡がいつでも可能な体制に加え、訪問看護師・臨床工学技士が参加したデータ共有や定期カンファレンスで細やかなチェックを実施しています。
訪問看護師からインターネット経由で体重増減・皮膚状態など細かい情報も共有され、患者さんの安心感につながっています。
Q9.腹膜透析がまだ広く普及していない理由とは?
腹膜透析は患者さん自身が手技を覚える必要がありますが、「手技が難しいから出来ない」という患者さん自身の先入観が普及を阻む一因かもしれません。
一方、血液透析は医療者に任せられるという安心感から選ばれやすい傾向があります。
さらに、透析イコール血液透析と一般的に認識されていることも影響していると思われます。
Q10.他院で血液透析中の患者が腹膜透析について相談したい場合、当院で対応できますか?
対応可能です。
透析クリニック等の紹介を通じて相談・受け入れとなります。
Q11.最後に、患者さんや地域の先生方へメッセージをお願いします。

透析により日常生活ができなくなるのではないかという不安を持つ患者さんは多数いらっしゃると思います。
患者さんの生活の質を重視し、個々の価値観に寄り添った治療選択を支援していますので、ご相談ください。
当初は腹膜透析に不向きと考えていた患者さんでも、コミュニケーションを丁寧にとることで対応可能となったケースもあります。
今後もさらなる腹膜透析の拡充をめざし、医師と看護師が協力して対応しておりますのでご紹介ください。
Beyond the White Coat
― 白衣の向こう側 ―
ここからは、医療や仕事の話から少し離れて、休日の過ごし方や好きなものなど、日常のひとコマから見えてくる医師の人となりや、ちょっと意外な一面をご紹介します。

*趣味
野球観戦が好きで阪神タイガースファンです。
昨年は日本シリーズ第5戦のチケットが当たり、甲子園で観戦しました。

*好きな食べ物
妻の手料理です。
*おすすめしたい飲食店
小さい子どもがいるため、家族で利用しやすい大起水産によく行きます。
子どももお寿司が大好きです。