Sakai Medical Stories Vol.10 不整脈治療の新たな選択肢:アブレーション導入で加速する循環器診療の最前線

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Vol.10 不整脈治療の新たな選択肢:アブレーション導入で加速する循環器診療の最前線
循環器内科 網屋 亮平 医師

2026年7月より、当院の循環器内科において「カテーテルアブレーション治療」が新たに導入されます。
この治療の牽引役となるのが、不整脈専門医である網屋亮平医師です。
これまで救急搬送されても他院へ転院せざるを得なかった難治性不整脈に対し、当院でいかに立ち向かい、患者さんの「予後」と「QOL(生活の質)」を守っていくのか。
導入に向けた熱い想いから、意外な素顔までを詳しく伺いました。
Q1.まずは、ご経歴についてお聞かせください。
2012年に医学部を卒業後、洛和会音羽病院、大阪警察病院、大阪大学大学院、八尾市立病院を経て、当院に着任いたしました。
大阪警察病院時代から不整脈治療を中心に研鑽を積んできました。
Q2.今、当院でアブレーション治療を導入することの地域医療における意義を教えてください。
当院は三次救急を担う医療機関ですが、これまでは不整脈が原因で救急受診された患者さんに対し、根治治療を提供できず他院へ転院搬送せざるを得ない状況がありました。
導入後は、救急から退院後の外来まで、当院で一貫した治療が可能になります。
特に、脳梗塞の原因となる心房細動や、重症心不全に合併する致死的不整脈に対し、早期に治療介入できることは非常に大きな意義があります。
Q3.導入にあたって、最も注力されている準備は何ですか?
「全身麻酔」下での治療環境づくりです。
アブレーションは焼灼の際に強い痛みを伴うことがありますが、当院では患者さんの満足度と安全性を高めるため、最初から全身麻酔で管理する方針を整えています。
これにより、患者さんは痛みを感じることなく、私たちはより精密で安全な治療に集中できるようになります。
Q4.アブレーションには様々な手法がありますが、当院ではどのような選択肢を提示されますか?
現時点では「高周波アブレーション」からスタートします。
最新のクライオ(冷凍凝固)やパルスフィールドアブレーションの実施には、専門医研修施設の認定が必要なため、1年後の認定をめざして準備を進めています。
認定後は、その時点で最も適した最新の治療機器を選択し、提供できる体制を整えています。
Q5.循環器内科医として、この治療における「技術」と「判断」の難しさはどこにありますか?
不整脈の機序 (仕組み)は非常に複雑で、未解明の領域が残っており、最適な治療方法が分かっていないことも多いです。
そのため、異なる患者さんに対して単に同じように焼けば良いわけではなく、その人にとって「心臓を守る」「予後を改善する」ために最適な治療は何かをテーラーメイドで考える判断力が求められます。
日々アップデートされる知見を吸収しながら、臨機応変に丁寧に治療を行うことを心がけています。
Q6.患者さんの入院期間や日常生活にはどのような変化が期待できますか?
基本的には3泊4日の入院ですが、患者さんの状態に応じて1週間程度になることもあります。
緊急入院された心不全の患者さんに対しては薬物療法のみではうまくいかなかった方が、早期にカテーテルアブレーションをおこなうことで、早期に退院がめざせることもあります。
止血処置を工夫することで、術後1〜3時間で座ることができ、3〜5時間で歩行可能な「早期離床」をめざします。
苦痛の多い尿道カテーテルも不要にできるケースが増えます。
治療後は運動能力が向上したり、内服薬を減らせたりと、生活の質(QOL)の劇的な改善が期待できます。
Q7. チーム医療において、プロフェッショナルとして大切にされていることは?
アブレーションは術者一人では絶対にできません。
看護師、診療放射線技師、臨床工学技士など、多職種が心電図や3Dマッピングなど多数のモニターを協力して監視し、適切に対応する必要があります。
チーム全員が不整脈を深く理解し、常に最新情報をアップデートし続ける研鑽を大切にしています。
Q8. これまでの診療で、特に心に残っているエピソードはありますか?

重症心不全で人工呼吸器が外せず、退院が困難だった心房細動の患者さんが、アブレーション治療を行ったことで、自分の足で歩いて自宅へ退院できたことです。
あの時の劇的な回復と患者さんの笑顔は、今でも私の大きな糧になっています。
Q9. 網屋先生が仕事の糧にされている「信念」は何ですか?
「一人ひとりの患者さんに丁寧に向き合うこと」です。
ハイボリュームセンターでは難しい、時間をかけた丁寧な治療が当院の強みです。
患者さんの不安やこれからの人生に寄り添い、納得感のある治療を提供し続けることが私の使命だと思っています。
Q10. 今後の展望についてお聞かせください。
先ほど述べたように、まずは不整脈専門医研修施設となり、術者体制を強化し、後進を育てていつでも治療できる体制を築くことです。その上で、発展し続ける最新の治療を提供できるようにしていきたいです。
また、心臓植込み型デバイスに関しても、ICD/CRT認定施設※となることで、様々なデバイスに対応できる一貫した体制を確立し、重症心不全治療の最後の砦となれるような診療科をめざしていきたいですね。
※ICD/CRT認定施設とは、不整脈治療における高度なデバイス治療(植込み型除細動器や両心室ペーシング治療)を行うために、「必要な設備」と「専門知識を持つ医師」が整っていると認められた医療機関のこと
Beyond the White Coat
― 白衣の向こう側 ―
ここからは、医療や仕事の話から少し離れて、休日の過ごし方や好きなものなど、日常のひとコマから見えてくるスタッフの人となりや、ちょっと意外な一面をご紹介します。

*趣味
できる限り毎朝5時に起床して30分〜1時間程度ランニングしてから出勤しています。
今年は大阪マラソンにも出場しました。
また、最近はブランクがありますが、実はヴァイオリンとヴィオラが弾けます。
大学時代は、学生オーケストラや社会人オーケストラなどに参加して毎月のように演奏会がありました。
自分や知人の結婚式で演奏したのも良い思い出ですね。


