Sakai Medical Stories Vol.5 高度専門薬剤師を育てる「臨床×研究」の新たな挑戦

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Vol.5 高度専門薬剤師を育てる「臨床×研究」の新たな挑戦
-「薬の疑問」を「市民の安心」へ。神戸薬科大学との連携で加速する、次世代薬剤師の育成。-
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当院は、堺市唯一の公立病院として、また地域医療支援病院として、常に質の高い医療の提供をめざしています。その鍵を握るのが、医療の高度化に伴い、薬物療法の要となる「薬剤師」の育成です。
この度、当院は学校法人 神戸薬科大学(以下、神戸薬科大学)との間で連携協定を締結しました。
これまで進めてきた近畿大学との連携に加え、さらに「教育」と「実践」のネットワークを広げることで、次世代の薬剤師教育はどう進化していくのか。
今回は、当院の薬剤師レジデント制度を牽引し、自らも「臨床と研究の両立」を体現してきた薬剤科 藤井 千賀 科長に、今回の提携の意義と、これからの薬剤師に求められる姿について詳しく話を伺いました。
Q1.そもそも「薬剤師レジデント」とは、どのような制度ですか?
一言で言えば、病院薬剤師の育成を「各施設任せの経験則」ではなく、到達目標を定めた体系的な教育プログラムに落とし込んだ仕組みです 。
当院では主に2年間のプログラムを基本としていますが、大学連携型では4年間かけて臨床経験を積みながら学術活動を行い、博士号取得までを視野に入れています 。
目的は「社会に出て一人前」というレベルを超え、明確な目標を持った臨床薬剤師を育成することにあります 。
Q2.制度導入の経緯を教えてください。
当院は自治体病院としては早期から取り組んでおり、2011年に2年制のレジデント制度を開始しました 。
さらに2016年からは近畿大学と連携し、臨床経験と学術的取り組みを組み合わせた4年制(大学連携型)を構築しています 。
現在、堺市内で薬剤師レジデントを標榜し、さらに大学と連携した臨床研究スキームを継続的に運用している急性期病院は数少なく、その点は当院の強みであると感じています。
Q3.神戸薬科大学との新たな連携協定により、教育環境はどう変わりますか?
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神戸薬科大学の「地域医療を支える医療人を育てる」という方針は、当院の役割と強く共鳴します 。
大学という「教育・研究の場」と、病院という「実践の現場」を密接にすり合わせることで、若手薬剤師がより深く地域医療に根差した経験を積めるようになります 。
また、連携大学が増えることで、より広いエリアから志の高い若手が集まるメリットも期待しています 。
(写真は神戸薬科大学との連携協定締結式の様子2026年2月2日撮影)
【左:学校法人 神戸薬科大学 神戸薬科大学 北川 裕之 学長・右:当法人 理事長 木村 正】
Q4.レジデントには、現場でどのような視点を持ってほしいですか?
日常の業務で生じた疑問や課題を「疑問のまま終わらせない」姿勢を身につけてほしいですね 。
その疑問を研究や成果物として体系的に掘り下げる訓練を、レジデント期間に経験してほしいと考えています 。
また、入院中だけで完結せず、退院後や入院前を支える保険薬局の薬剤師さんとどう協働するかを学ぶ機会も大切にしています 。
Q5.36診療科を擁する当院で、薬剤師の「専門性」はどう発揮されていますか?
36診療科を擁する急性期病院では、薬剤師は単に薬を供給する存在ではなく、診療科を横断して薬物療法を支える役割を担っています。
重症度の高い患者さんに対して、安全で効果的な治療が行われるよう、医療安全や抗菌薬・抗がん剤の適正使用の面からチーム医療に貢献しています。
さらに、地域医療機関との連携や医薬品の適正管理を通じて、医療の質と持続可能な病院運営の両立を支えていくことも、私たちの大切な使命だと考えています。
Q6.主体性を育むための指導体制について教えてください。
1年目は調剤や注射薬監査などの中央業務から開始し、後半にかけて病棟・ベッドサイドへと段階を進めます 。
大切にしているのは、定期的に実施している「症例検討会」です 。
現場で生まれた疑問を先輩薬剤師と振り返り、肉付けして、再び現場へアウトプットする 。
指導側も、後輩からの問いによって学び直しや気づきの機会を得ており、組織全体の成長に繋がっています 。
Q7.この取り組みは、最終的に「市民の安心」にどう還元されるのでしょうか。
研究視点を持つことで知識が深まり、薬に対する考え方や説明がよりロジカルになります 。
個人の満足で終わらせず、得られた知見を地域の医療機関との連携へ派生させ、「地域全体の安全性」に寄与すること 。
堺市唯一の公立病院として、高度な医療環境を活かした学びを市民の皆様の安心へ還元していくことが私たちのビジョンです 。
Q8.スタッフに常に伝えている「一番大切なこと」を教えてください。

仕事の先には必ず患者さんとご家族がいることを忘れないでほしい、ということです 。
忙しさで業務が目的化しないよう、医療の原点に立ち返り「丁寧に」行うこと、そして失敗を恐れず挑戦することを伝えています 。
Q9.薬剤師としての忘れられないエピソードを教えてください。
がん薬物療法領域で、治療方針に迷う患者さんに対し、薬の特性や副作用を丁寧にご説明したことで、患者さんご自身が納得して意思決定をされる場に立ち会えました 。
根拠と経験に基づき、患者さんを支えられる薬剤師をこれからも育てていきたいですね 。
Beyond the White Coat
― 白衣の向こう側 ―
ここからは、医療や仕事の話から少し離れて、休日の過ごし方や好きなものなど、日常のひとコマから見えてくるスタッフの人となりや、ちょっと意外な一面をご紹介します。

*趣味
趣味は登山です。
尊敬している医師に誘っていただいたことがきっかけで始めました。
金剛山や須磨アルプスを歩く時間は、忙しい日常から離れて気持ちを整える大切な時間です。
夏は沢登り、冬はアイゼンを装着して雪山にも挑戦しています。
毎年一度は北アルプスの高い山に登ることを目標に、長く続けていきたいと思っています。

日々の多忙な業務を終え、ふとした瞬間にリフレッシュできる時間はありますか?そう尋ねると、藤井科長からは意外にも(?)情熱的な「スイーツ愛」が飛び出しました。
手に取るだけでテンションが上がると語るのは、兵庫県西宮市甲陽園にある名店「ケーキハウス ツマガリ本店」です。
「デパートでも焼き菓子は買えますが、お目当ては本店にしか置いていない“生菓子”なんです」
そう語る藤井科長の推しは、知る人ぞ知る銘品『シュー・ア・ラ・クレーム』。
「これ、本当に美味しいんですよ。中にはクリームがこれでもかというほどパンパンに詰まっていて」と、その満足感を噛み締めるように教えてくれました。