基本プログラム
更新日:総合内科での研修
総合内科はユニークな集団で独自の背景を持った医師が一同に会して総合的な診療を行っています。
垣根の低い当医療センターの内科の中でも、特に他の診療科との敷居を低くして、協力してさまざまな疾患を診療しております。とくに臓器特異性のない分野である膠原病・アレルギー、感染症、救急~集中治療、家庭医学、心療内科については、専門性を持ち、診療しております。
私たちの3つの柱は、
① 研修医教育(Graduate Medical Education)
② 堺市の総合内科(Urban General Internal Medicine)
③ リサーチマインドの醸成(Research Mind)
で、大阪府堺市という都市部の医療環境の中で、研修医の先生と一緒に、質の高い医療を実践することで教育を行います。あわせて、現在の医学でわかっていないことについてリサーチマインドを持てるようにしていきます。
半年の中研修の内、全員が3ヶ月間、総合内科を回ります。総合内科では専門内科研修で診られなかった疾患を幅広く経験していただきます。
専門内科での研修
当院内科は1980年代より、出身大学にかかわらず全国より臨床医をめざす医師を集めてきました。内科全員が generalist であることをめざして、内科全体で症例検討や勉強会・抄読会などをおこない、これが現在の「垣根の低い」内科の礎となっています。2002年に、総合内科・血液内科・腎代謝免疫内科・呼吸器内科・消化器内科・循環器内科(その後神経内科・心療内科)が独立した後も「優秀な generalist でなければ優秀なspecialist にはなれない」という理念の下に、初期研修医に対する指導をおこなっています。私たちは、初期研修において医師としての基本的な診療能力を身につけるためには、一定期間内科での研修が必要と考えています。当院の初期研修システムでは以下のように、2年間の中で最大16ヵ月の内科研修が可能です。
- 1年目に総合内科と2つの専門内科をそれぞれ2ヶ月ローテーションする
- 2年目の自由選択期間にも、総合内科や1年目でローテート研修した専門内科、ローテートしなかった専門内科を選択できる
また、当院内科での初期研修では、以下のような特色があります。
- 初期研修医は、第一担当医として責任を持って入院患者の診療をおこなう
- どの指導医も初期研修医をお客さん扱いせず本気で教育する姿勢をもっている
- 総合内科では、特に病歴聴取・身体所見を重視した研修がおこなわれる
- どの専門内科においても、グラム染色を基本とした感染症診療が重視されている
- 新入院カンファレンス・退院症例カンファレンス・症例検討会・抄読会・内科レクチャーなど
- 内科全体でおこなわれる多彩なプログラムに参加できる
- 卒後3~5年目の研修医は初期研修医に、初期2年目は初期1年目に教える文化がある
- 初期研修医の間に内科学会近畿地方会などでの学会発表が経験できる
どの科にすすんでも、当院での初期研修は一生の財産になると信じています。
各専門内科での研修の説明
総合内科は全員が2ヶ月、その他の専門内科から2つを選んで2ヶ月研修します
外科での研修
1年目の「基本研修」のうち3か月間は外科系研修を行います。希望があれば一般外科(消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科、心臓血管外科、外傷外科)を2ヵ月研修したのち1か月間脳外科、整形外科を選択することも可能です。
初期研修における外科での研修の目的は、外科的治療の対象となる疾患を正しく診断し、適切な治療(手術)方針を決定し手術を遂行したのち術後急性期の全身管理を行って無事退院となるまでの一連の診療スキルを体系的に習得することです。限られた研修期間ですが、手術手技についてもできる限り取り組んでもらいます。あわせて、患者さんへのインフォームドコンセントやコメディカルとのチーム医療を通して臨床医として要求されるコミュニケーション力を磨いてください。
3か月では満足できないあるいはより専門的な外科研修を極めたいという場合は、2年目の選択研修で消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科、心臓血管外科にリチャレンジしてください。興味が深まれば学会などでの研究発表の機会もありますのでこれら学術面も積極的に支援します。各専門領域のエキスパートがそろった当院は外科専門医を目指す諸君にもおすすめです。大阪府下でも有数の手術症例数と最新の医療設備を備えた研修環境のなか熱意にあふれる外科スタッフが指導します。
脳神経外科での研修
脳神経を専門とする診療科での研修を初期研修期間中にしっかりと受けておかれることはとても大切です。
頭部外傷や脳血管障害に伴う脳循環障害、脳腫脹をきたしている患者さんの初期診療、患者管理、さらには外科治療を医師になったばかりのこの時期にその基本をきちんと身につけておくことは、将来、どのような基礎、臨床の専門医になろうともずっと役立ちます。さまざまな脳病態のダイナミックでかつ詳細な画像変化、さらに手術時に実際の脳、脳血管を目の当たりにして、病態管理の感覚を身につけてください。当院初期研修で専門的な脳神経研修は「脳神経外科」でしか受けられません。病院見学などでお会いできるのを楽しみにしております。
整形外科での研修
整形外科では脊椎や関節疾患、骨折の治療を行っています。特に救命センターがあるので、重傷四肢外傷の治療が多いことが特徴となっています。そこで当院では初期研修医の先生に、整形外科を専門にしなくても日常診療で役に立つ普通の外傷の診療方法、例えば初期診療で、受傷機転は何か、どこに圧痛点があるか、神経学的異常所見はないか等の基本的な問診・診療方法や適切な画像撮影の指示方法指導をしています。
また、手術に助手として参加していただき、骨の穿孔等実際の手技も体験していただいています。もちろん毎週のカンファレンスと抄読会でより専門的な整形外科の知識も得られます。整形外科に興味がある先生はもちろんのこと、興味がない先生も怪我の基本的な処置ができるようになることは将来役立つと思います。
産婦人科での研修
こんにちは。突然ですが、産婦人科は内科系だと思いますか、外科系だと思いますか?
正解は・・・ちょっとずるいですが両方です。私たち産婦人科は妊娠に関わる血圧や血糖の管理を内科的にすることもあれば、帝王切開のように外科的に介入することもあります。卵巣や子宮の腫瘍を内科的に診断して薬やホルモン補充で治療することもあれば内視鏡手術や悪性腫瘍手術のように外科的に切除することもあります。そして、もちろん消化器やその他の疾患との鑑別も求められます。
堺市立総合医療センターの産婦人科では今年度500件を超える分娩が予定されており、加えて年間350~400件の手術、600件の救急症例の診察にあたっています。救急の診察では様々な疾患との鑑別が要求されますがその分大変力になりますし、手術に関しては内視鏡技術認定医、婦人科腫瘍専門医の研修施設であり、産婦人科を志す若い先生方がバランス良く研修できるのはもちろんのこと、内科や外科系を志す先生が自信を持って若い女性の腹痛の診察にあたれるスーパージェネラリストになれるだけのすばらしい研修環境を備えていると自負しています。日々忙しい中にも、充実感と達成感をお約束します。私達のチームの一員として一緒に学び、働いてみませんか?お待ちしています!
小児科での研修
小児科での研修の到達目標は、将来どのような診療科に進んでも必要となりうる小児に関する知識と技術を修得するとともに、医師として必要な疾患に関する考え方や患者および患者家族に対して医療者の考えをわかりやすく説明する方法を修得することです。
目の前にいる病気の子どもを診て、緊急性を要するのか経過観察が可能なのかの判断ができ、乳幼児の採血・ルート確保ができること、また保護者にわかりやすく納得のいく説明ができることを目指します。そのためには2ヶ月間にできるだけ多くの子どもを診療することが必要です。当院の小児科は堺市の小児救急搬送(小児内科疾患)の約50%を受け容れており、年間入院患者数は1,500人程度、肺炎・腸炎などのcommon diseaseから白血病などの悪性疾患まで幅広い診療を行っています。経験できる疾患・症例も多く、将来小児科を目指す方には手応えのある研修であり、他科を目指す方にも小児を知るための十分な研修が可能です。
救急科での研修
当院では、年間9,300台以上の有数の救急車受入を行っており、社会が求めている医療を地域に供給しています。
上級医、指導医とともに診断のついていない初療を数多く経験できます。ほとんどの疾患について最後まで当院で対応可能であり、その後の診療経過を体験することができます。
病院全体で支える救急外来において、救急専門医・各科専門医とともに、チームの一員として救急の現場に飛び込んで、自信を持って救急対応できるように経験していただきます。
麻酔科での研修
当院の麻酔科は日本麻酔科学会認定の麻酔科認定病院であり、 中央手術室で施行されるすべての全身麻酔管理と一部の全身麻酔以外の麻酔管理を担当しています。 年間の麻酔科管理症例は約2,700件です。 常勤スタッフは麻酔科指導医2名、 麻酔科専門医2名、麻酔科認定医2名の6名です。術前診察において個々の患者のリスク評価を慎重に行い、 主科および関連各科と十分にディスカッションして、 患者様に最適で安全かつ高度な周術期管理を提供するよう心がけています。
初期研修医は指導医、専門医の指導のもとにリスクの少ない予定手術の麻酔管理を中心にして以下の項目を習得することを目標としています。
① 基本的な術前評価・術後管理
② 麻酔の基本手技(マスク換気、 気管挿管、 末梢静脈ルート確保等)
③ 呼吸・循環生理の基礎学習
④ 麻酔器・モニターの取り扱いや計測値の正しい評価
⑤ 周術期管理に必要な薬剤の薬理学的知識とその使用方法
⑥ 麻酔覚醒の判断力および合併症に対する知識
⑦ 術後評価や術後鎮痛についての知識
研修期間中には手術室における実地研修だけでなく、 興味深い症例や臨床データをもとにした学会発表や論文執筆などの指導も行います。
精神科での研修
研修先のひとつである「医療法人 杏和会 阪南病院」は、精神科主体の690床の病院です。
ここでは、精神科救急から認知症、ストレスケア、児童精神といった精神領域すべてに即応できる体制が整えられています。患者層は、新入院の35%がうつやストレス関連障がい、統合失調症32%、認知症7%、アルコールや薬物などによる障害4.9%などが上位にあがり、多くの症例を学ぶことができます。
また、うつや双極性感情障害の補助診断として光トポグラフィー検査の実施や、難治性精神疾患を対象にクロザリル処方、m-ECT(修正型電気けいれん療法)など先進医療にも積極的に取り組んでいます。加えてデイケアではリワーク(復職支援)プログラム、児童病棟を中心としたスポーツ活動や認知症病棟でのダンスセラピーなども行っています。また希望により終夜睡眠PSG検査実習や精神科救急実習を行うことが可能です。
期間中は指導医のもと、外来実習では陪席、2週目頃から代診もしていただきます。指導医が主治医になった新入院患者さんは研修医も担当医になり、鑑定などが入ることもあります。症例は「統合失調症」「気分障がい」「認知症」だけでなく、受持ちは指導医の患者さんすべてを一緒に診ることになります。併せて、精神科には精神保健福祉法という法律があり、患者さん個々に開放・閉鎖の処遇が異なります。隔離・拘束に関しても、法令を充分理解した上での対応が必要です。精神科医療の理解を含め、しっかりとした指導のもと学びの多い期間であると思います。
地域医療研修
急性期病院の病棟・外来だけではわからない患者の日常生活や地域性に即した医療を経験する目的で地域医療研修を4週間行います。堺市に2次医療圏で当院との繋がりの深い中小病院と診療所の両方で研修することで、急性期医療以降の回復期・慢性期医療を連続性をもって経験できます。医師の指導の元、外来・訪問診療・病棟診療をするだけでなく、介護・保健・福祉との連携を含めた地域包括ケアの実践現場を経験してもらうため、研修の場は、保健所、薬剤師会、訪問看護ステーション、リハビリ等、多岐にわたります。外来は、外来研修の並行研修でもあり、慢性疾患の継続外来を経験してもらっています。選択研修で希望があれば、地域医療研修の研修先と名高い紀南病院(三重)、瀬戸内徳洲会病院(鹿児島)で、堺地域と異なる地域性を学ぶことも可能です。
研修先の医療施設
病院
診療所
堺地域以外の病院(選択研修のみ)
救急当直と研修サポート
上級医、指導医とともにたくさんの救急患者を経験し社会に必要とされる場面でプライマリケアを実践できるように経験していきます。
毎週水曜日朝の初期研修・診療基本勉強会で基本的な知識を身につけながら、少しずつ実践に対応できるようになっていきます。
またシミュレーションセンターを今後活用していく方針です。
シミュレーションセンター
研修医は、日々、患者より多くのことを学んでいます。その学びをよりスムーズに、効率的に行うためには、事前予習が欠かせません。教科書を読むことは当然ですが、手技に関しては、体を動かして体に覚えこませる必要があります。シミュレーションセンターでは、採血、筋肉注射、静脈留置針挿入、中心静脈穿刺、気道確保、縫合などの訓練用モデルをそろえ、患者に実施する前の訓練を実施しています。
手技のトレーニングだけでなく、臨床上、重要ですが参加する機会が得にくい処置(心肺蘇生や重症患者の初療など、緊急すぎて見学だけになりがち)を人型中機能シミュレーター(血圧などのモニター、心音などが再現できる)を用いた訓練を計画しています。
これら重症患者の初療においては、一人ではなく、複数人数集まったチームでの医療を行う必要があります。チーム医療がスムーズに行えるためのスキル(Non-Technical Skills)も身に着けるためには、グループトレーニングが欠かせません。手技、基本的処置を身に付けた後は、Non-Technical Skillsの訓練にも取り掛かる予定にしております。
シミュレーションセンターは、誕生したばかりの施設です。研修医の皆さんの需要に答えていけるよう育てていきたいと考えております。皆さん、一緒に頑張りましょう。
初期研修・診療基本勉強会
当院では、初期研修の1年で基本的な救急診療のスキルを身につけ、2年目になったら、後輩に正しく教育できることを目標としています。その教育の一環として、診療経験豊富な各診療科のスペシャリストが、臨床に直結するエッセンスを惜しみなく披露しております。早朝にもかかわらず、出席率はほぼ100%と研修医も意欲的に参加してくれています。
対象者
初期研修医1年目
初期研修2年目の先生や、上級医の先生の出席も可
- 第1回 4/25 救急に入る心構え(総合内科/浅川先生)
- 第2回 5/9 点滴・輸血(救急外科/森田先生)
- 臨時 5/10 大動脈穿刺(後期研修医/風間先生)
- 第3回 5/16 心肺蘇生(後期研修医/中田先生)
- 第4回 5/23 発熱(後期研修医/黒田先生)
- 第5回 5/30 腹痛(後期研修医/北島先生)
- 第6回 6/6 めまい(後期研修医/山田(悠)先生)
- 第7回 6/13 胸痛(後期研修医/風間先生)
- 第8回 6/20 失神(後期研修医/岡谷先生)
- 第9回 6/27 救急の外科概論(救急外科/森田先生)
- 第10回 7/4 呼吸困難(後期研修医/平山先生)
- 第11回 7/11 脳卒中(脳神経外科/中島先生)
- 第12回 7/18 胸腔穿刺(呼吸器内科/西田先生)
- 第13回 7/25 腹腔穿刺(消化器内科/高橋先生)
- 第14回 8/1 腰椎穿刺(神経内科/湯浅)
- 第15回 8/8 突き指・捻挫・打撲・切り傷の対応(整形外科/大野先生)
- 第16回 8/15 熱中症・低体温(救急外科)
- 第17回 8/22 急性腹症(救急外科)
- 第18回 8/29 頭部外傷(救急外科)
- 第19回 9/5 外傷初期診療(救急外科)
- 第20回 9/12 熱傷(救急外科)
- 第21回 9/19 骨折のみかた(整形外科/大野先生)
- 第22回 9/26 (後期研修医)
- 第23回 10/3 (後期研修医)
- 第24回 10/10 (後期研修医)
- 第25回 10/17 (後期研修医)
- 第26回 10/24 (後期研修医)
- 第27回 10/31 (後期研修医)
- 第28回 11/7 (後期研修医)
- 第29回 11/14 (後期研修医)
- 第30回 11/21 中毒(後期研修医)
- 特別編 11/28 Clinical problem solving①-1(花房院長)
- 特別編 12/5 Clinical problem solving①-2(花房院長)
- 第31回 12/12 鼻出血(耳鼻咽喉科/藤崎先生)
- 第32回 12/19 産婦人科救急(産婦人科/角田先生)
- 第33回 12/26 Oncology Emergency(外科/神垣先生)
- 第34回 1/9 皮膚科救急(皮膚科/白井先生)
- 第35回 1/16 泌尿器科救急(泌尿器科/武田先生)
- 第36回 1/23 眼科救急(眼科/沢先生)
- 特別編 1/30 Clinical problem solving②-1(花房院長)
- 特別編 2/6 Clinical problem solving②-2(花房院長)
- 第37回 2/13 不定愁訴(内科/北島先生)